シャープ「IGZO」の無効判決、上告断念

2015年03月22日 09:48

 シャープ<6753>は3月11日、液晶パネルに使う「IGZO」の商標登録について、知的財産高等裁判所が無効とした判決を精査した結果、最高裁への上告を断念したと発表した。これによりアルファベットによる「IGZO」という名称を液晶パネルにシャープが独占的に使用する権利がなくなった。ただし、これはアルファベットの「IGZO」だけであり、カタカナの「イグゾー」や「イグゾーパネル」、そして「IGZO」に独自のロゴマークに関しての商標登録は完了しており、これらの登録商標をこれから使用するとしている。

 「IGZO」であるが、1985年に科学技術庁無機材研究所の君塚昇氏が、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸素(O)から結晶IGZO合成に成功した。IGZOとは酸化物半導体のことであり、使用している原材料名の頭文字からIGZOという名前が生まれた。東京工業大学が科学技術振興機構(JST)の支援事業で行ったために、特許権はJSTが管理しており、シャープはライセンス契約を結び生産をしている。そして、シャープが世界で初めてIGZOの量産化に成功した。液晶ディスプレイ形式の呼称としてIGZOが使用されているが、本来のIGZO技術は半導体デバイス技術であり、液晶パネルのみならず、様々な分野での応用が可能な技術である。

 2011年6月にシャープはIGZOの商標登録を出願した。同年11月に登録が認められたものの、13年7月にJSTが商標登録無効の申立てをおこなう。「商標法は原材料名を商標として登録できないと定めており、IGZOという名称を研究者が自由に使用できなくなる」というものが申立ての理由である。14年3月、特許庁はシャープの出願した商標が無効である判断を下した。これを不服としシャープは同年4月に知的財産高等裁判所へ提訴。そして、15年2月25日に知的財産高等裁判所が「IGZOは原材料名として、シャープの出願時にはすでに広く使われていた」としてシャープの訴えを棄却、「特定の者に独占使用させるのは適当ではない」と判決が下された。

 シャープとしては、アルファベットによる「IGZO」のみ商標登録が認められなかっただけで、業績には特に影響がなく上告を断念した。世界の亀山ブランドと呼ばれた液晶テレビに固執し競争力を失ったシャープを経営危機から救ったIGZO。商標に固執せず法廷闘争を避けたのはシャープの英断である。シャープはさらに経営再建に注力してもらいたい。(編集担当:久保田雄城)