小売業のパート社員の不足が問題になってから数年が経つ。厚生労働省の調査によると、パート労働者の過不足判断指数(「不足」と回答した事業所の割合から「過剰」と回答した事業所の割合を差し引いた値)は、2015年2月に+31となった。11年以降15期連続で不足状況となっている。
このような背景から、食品スーパー大手のライフコーポレーション<8194>は、パート社員約2万人を対象に、毎年賃金が上がっていく定期昇給を15年5月から始めると発表した。三越伊勢丹ホールディングス<3099>も首都圏11店舗の契約社員3500人を対象に評価に応じた時給の引き上げ幅を上げると発表している。パート社員の定期昇給の流れはライフなど大手にとどまらず、中堅のスーパーにも広がっている。
定期昇給ばかりが話題になるが、興味深いのはその内容である。ライフコーポレーションは評価区分が上がらないと昇給できない仕組みだったものを、評価区分に応じて昇給の幅を決めることに変更した。新しい仕組みだと現在の評価区分でもパート社員が努力をすればそれに見合った昇給が得られる。
三越伊勢丹ホールディングスは、チームワークへの貢献や商品知識といった基準で評価の高い人が時給の上げ幅も高くなる制度にした。さらに評価の機会を年1度から2度に増やすことでパート社員の努力がすばやく時給に反映されるように変更した。
これらパート社員の時給の制度変更は、能力や意欲が高い人だけでなく、他のパート社員のやる気も引き起こすきっかけとなる。海外の調査で日本には直接当てはまらないかもしれないが、社員に対する興味深い調査結果がある。
社員が仕事に対して願っていることは「誇りに思える会社で働きたい」「能力向上の機会が欲しい」ことで、この二つはどちらも回答者の半数がそうあって欲しいと答えている。
また、今の仕事が好きと言える理由は「同僚やお客さんとの関係が良好だから」「上司との関係が良好だから」というものが多かった。社員はお金だけでなく、内面の満足感や人間関係を重視しているという結果である。
パート社員が長く働ける仕組みはできた。次は社員がこの会社で働きたいと思える環境ができているか?である。これらの条件がそろった時、優秀なパート社員の人材不足は解消されるだろう。(編集担当:久保田雄城)