一般財団法人省エネルギーセンターが公表している「EDMC/エネルギー・経済統計要覧2013年版」による、一人あたりのエネルギー消費量の推移をみてみると、日本人一人あたりが1年間に使用するエネルギー量は、なんと世界平均の約2.3倍。世界でも有数のエネルギー消費国であることが分かる。しかし、それだけのエネルギー大量消費国でありながら、エネルギー自給率はわずか5%。現在停止している原発を稼働させて準国産エネルギーとみなした場合でもたった11%に留まる。残念ながら、先進国の中では断トツに少ない数字であることは言うまでもない。
エネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っている日本。しかも、日本が必要とするエネルギー資源の約半分以上を占める石油は、その90%以上を政情不安が続く中東地域からの輸入に依存している。地球温暖化の問題ももちろん大切だが、エネルギー需給は日本人の死活問題なのだ。
2013年6月に閣議決定した「日本再興戦略」の中で、安倍政権は2020年までに省エネ基準の義務化とZEHの普及を掲げている。「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」とは、一次エネルギーの年間消費量より、住宅で創り出したエネルギーの方が多い、もしくはその差が正味(ネット)、ゼロになる住宅のことだ。「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」などを上手く活用して、省エネを行いながら、太陽光発電などで効率よく「創エネ」を行う。これが日本の住宅で標準化すれば、日本のエネルギー事情は大きく変わるだろう。
このような理想的な社会の実現に向け、すでに動き出しているのが日本の住宅メーカーだ。とくに大手住宅メーカーではZEHは特別な仕様ではなく、政府目標よりも一足早く標準仕様になりつつあるようだ。例えば、大和ハウス工業<1925>の「xevo」シリーズや、住友林業<1911>の「グリーンスマート」などがあるが、大手の中でもとくに積極的な展開を見せているのが、パナホーム<1924>ではないだろうか。
パナホームは2014年にも、ZEH仕様をパッケージ化した仕様を新規に立ち上げるなど、「ゼロエネを超える、先進の創エネ・省エネ・活エネの住まい」を掲げて商品開発に取り組んできたが、2015年は、蓄電池等の採用でエネルギー収支ゼロを超えるエコ性能を備えた「ゼロエコ」仕様を新しく設定し、4月1日より戸建住宅商品に展開することを発表した。
「ゼロエコ」は、同社が独自に提案する「3つの未来標準」〔(1)「太陽光+蓄電システム」(2)「家まるごと断熱」+「エコナビ搭載換気システム HEPAプラス」(3)「スマートHEMS」+「プライベート・ビエラ」〕の採用により、省エネ性能と創エネ性能を極限に高めたもので、平均的な太陽光発電システムの搭載量でもZEHを越える暮らしも実現可能。高い環境性能と経済性を両立する高性能住宅だという。さらに経済産業省によるZEH支援事業における補助金制度の要件に対応しているので、邸毎の個別申請を行うことで補助金を受け取ることもできる。同社試算によると、一次エネルギー自給率約300%の「エコ・コルディスⅡ」の場合、太陽光発電の売電額が年間約41.7万円となり、年間光熱費は約35.5万円のプラスになる。約20年前の住宅と比較した場合、なんと約70.9万円もの節約になるというから驚きだ。ZEH自体は大手メーカーの標準仕様となりつつある今、それを超える仕様として注目を集めそうだ。
同社の住宅は、省エネルギー住宅のトップランナーを選定する表彰制度『ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー』(主管:一般財団法人日本地域開発センター)において通算で7回連続受賞するなど、外部からの評価も高い。
日本のみならず、欧州連合(EU)でも2010年に交付された省エネ建築物指令(EPBD)において、2020年末までにすべての新規の建物がゼロ・エネルギー建物となることを求めていることからも、2020年という年は世界的にみても、エネルギー問題のターニングポイントとなりそうだ。しかもその2020年は、図らずも日本で待望の東京オリンピックが開催される年。否が応でも世界各国からの注目が集まり、観光客も大幅に増えるだろう。世界に恥じないエネルギー先進国としての日本の姿を見せたいものだ。(編集担当:藤原伊織)