2020年東京オリンピック・パラリンピック招致委員会を中心に進められている2020年のオリンピック・パラリンピックが、計画通りに東京開催で決まったら、その経済波及効果は2兆9600億円(そのうち東京都内で1兆6700億円)にのぼるという試算がある。東京都では2016年の開催も目指したが、その際の経済波及効果は2兆2000万円が見こめるとしたデータもあった。招致にかかる「活動費」は、2016年のための招致活動で150億円、2020年の招致のためには75億円としている。招致費用は半額におさえ、競技場などの整備は新国立競技場の建設を撤回し、現国立霞ヶ丘競技場の改築に計画を変更。そのかわり選手村の施設充実などを新たに計画に盛りこんでいるが、設備費用は3000億円以上かかると想定している。さらに道路整備など直接は競技開催に関係ない設備の整備まで含めれば、さらに1兆円ほどにまで膨れ上がるという見方もある。
五輪とパラリンピックにまつわる経済波及効果額は、かかった額の2~3倍というところが妥当な額であるとすれば、確かに2兆9600億円という金額になる。ただしこれまでのように五輪だからテレビを買いかえるとか、ロンドン五輪の時のようにインターネット中継が始まったからスマートフォンやタブレットPCを新たに購入するとか、そういうムーヴメントが起こるかどうかはわからない。新技術への転換期とうまくシンクロすれば、もっと大きな効果も期待できる。たとえばフルハイビジョンの約4倍の解像度がある「4K」テレビは、しばらくは「1インチ1万円以上」が価格の目安らしいが、2020年までに価格が大きく下がれば、4Kテレビの需要が一気に膨らんだりすることもあるかもしれない。
2020年のオリンピック・パラリンピック開催地決定は2012年9月。東京オリンピック・パラリンピックの開催には、賛成と同じくらいの反対意見があるということだが、東京に決まれば莫大な金額が東京を中心に日本国内で動き出すのは間違いない。ちなみに2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックでは、日本国内だけで8037億円の経済効果があったと電通総研が発表した。また2014年が明ければすぐに開催されるロシア・ソチでの冬季オリンピック・パラリンピックで、日本円で1兆5000億円程度の経済波及効果をロシアでは見込んでいるといわれている。
今年は「プロ野球のワールドカップ」というべきワールドベースボールクラシックが開催されることになっている。本家のFIFAワールドカップに比べれば規模は小さいが、日本代表が事前の宮崎合宿から日本で開かれる第1、第2ラウンド、アメリカで開かれる決勝ラウンドまで順調に勝ち進んだとすると、経済波及効果は前回の550億円を上回るという見方がもっぱらだ(2009年WBCの経済波及効果を試算した関西大学大学院・宮本勝弘教授のデータがベースになっている)。参考までに前回優勝した選手には、ひとり当たり出場料と優勝賞金やボーナスなどで800万円ほど支払われたという。一方で賞金の半分は野球振興に使われることになった。
大きなスポーツイベントの経済波及効果というと、かなり景気の良い金額が発表される。でも、それが直接関係のある業界だけではなく、周辺にまで満遍なく、『文字通り』波及して、みんなが潤ったなという実感があれば、オリンピック・パラリンピックの招致は成功と言えるのだろうが、往々にして経済波及効果というデータはわかりにくいようにも思える。(編集担当:帯津冨佐雄)