企業のアベノミクスへの評価は「64点」

2015年04月17日 07:42

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アベノミクスに対する評価には企業規模による差が表れている。「大企業」が 66.5点だった一方、「小規模企業」は 62.2点となっており、大企業ほどアベノミクスを評価する傾向がある

 国内景気は、企業の設備投資意欲の改善で生産関連が堅調に推移しているほか、原油安や円安による外部環境の改善も加わり、消費税率引き上げ後の悪化傾向から脱し、上昇基調の様相をみせている。他方、人手不足による受注機会の喪失は景気拡大を抑制する懸念材料ともなっているなか、地域や業界、規模によって景気動向が業績に与える影響は異なっている。

 このような背景の中、帝国データバンクは、2015年度の業績見通しに関する企業の見解について調査を実施した。調査期間は2015年3月18日~31日、調査対象は全国2 万3,336社で、有効回答企業数は1万845社(回答率 46.5%)。

 まず、2015年度(2015年4月決算~2016年3月決算)の業績見通し(売上高および経常利益ベース)について尋ねたところ、「増収増益(見込み)」と回答した企業は 28.0%となり、2014年度実績(見込み含む)から2.1ポイント減少した。他方、「減収減益(見込み)」は前年度から4.2 ポイント減少した。また、「前年度並み(見込み)」は 10.1 ポイント増加した。

 2014年度の企業業績は4月の消費税率引き上げによる景気落ち込みの影響を受け、「減収減益」だった企業は2013年度実績(17.3%)から5.4ポイント増加した。2015年度見通しは2014年度実績と比較すると、「増収増益」が2.1ポイント減少しているものの、同時に「減収減益」を見込む企業も減少している。大手企業の春闘における賃上げ回答や正社員採用意欲の高まりなどによる雇用・所得環境が改善しているほか、原油・天然ガスの価格低下によるコスト負担の軽減などが予想されるなか、企業の45.0%が増収を見込むなど(「増収」は、「増収増益」「増収減益」「増収だが利益は前年度並み」の合計)、2015年度業績は総じて前年度を上回る見通しであるとしている。

 2015年度の「増収増益(見込み)」企業の割合を業界別にみると、「金融」が最多となったほか、「サービス」や「運輸・倉庫」、「小売」などが全体を上回った。特に、「小売」は 2014年度実績より5.6ポイント増加しており、最も業績の改善が進むとみられる。

 次いで、安倍政権による経済政策(アベノミクス)について、現在までのアベノミクスの成果を100点満点で評価した場合、何点と評価するか尋ねたところ、平均64.2点だった。企業は2年余りにわたるアベノミクスについて、60点以上の点数をつけている。企業からは、「経済政策の目標が明確で、日本の進むべき方向が示されている」(不動産、兵庫県、95点)や「低調な機運を上昇方向に向けてくれた」(建設、大分県、77点)など、方向性を明確化したことや日本社会の雰囲気を転換させたという意見が多くみられた。

 しかし、アベノミクスに対する評価には企業規模による差が表れている。「大企業」が 66.5点だった一方、「小規模企業」は 62.2点となっており、大企業ほどアベノミクスを評価する傾向がある。総じて、企業はこれまでのアベノミクスに 60点以上をつけているものの、中小企業や地方において大企業優先という不満も高まっており、企業の約3割は 60点未満となっている。政府には、これらの企業が訴える実情を踏まえて、政策を実行していくことが求められるとしている。(編集担当:慶尾六郎)