凋落するフジテレビ、台頭するテレ朝

2013年01月13日 16:44

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2013年、フジテレビが以前のように時代を先取りするようなヒット番組を生み出し、再び視聴率王座を奪還することができるのかに注目したい。

 一昔前はドラマやバラエティで高い視聴率をとるヒット番組は、フジテレビ<4676>から多く生まれていた。2004年から2010年までの7年間、年間視聴率3冠王を維持し、まさしくテレビ王者の座に君臨していた。しかし、2011年には日本テレビ<9404>に三冠の座を奪われ、昨年はテレビ朝日<9409>の躍進により、民放キー局の勢力図は様変わりした。

 特にここ最近、フジテレビの視聴率低迷を物語るように、昨年は一時代を作ったといわれるような「はねトび」や「HEY!HEY!HEY!」などの看板番組が終了していった。お昼の情報番組「知りたがり!」も視聴率1%という不名誉な記録をたたき出し、8月には打ち切り、という噂も出ている。反対にテレビ朝日はバラエティでは「お願い!ランキング」「お試しかっ!」などが好調で、ドラマでは「相棒」などが安定した視聴率を挙げている。

 そもそも、民放テレビ局は番組を一般視聴者向けに放送する事が本業ではあるが、収入源となるのは、スポンサーから得られる番組に伴うタイム広告や、番組の間に流されるスポット広告からの収入の他、テレビ番組を系列のローカル局等に販売する事により得られる収入、スタジオを運用する事により得られる収入なども大きい。また、テレビ局では、番組の放送以外にも様々な事業を展開しており、例えば映画や音楽、スポーツ関連の事業やイベント事業等から得られる収入、出版物やビデオ等の企画、制作、販売やノベルティ商品の販売の収入なども挙げられる。

 なかでもスポンサーからの広告収入は、番組の視聴率が大きく左右してくる。スポンサーサイドとしては多額の広告料を支払う見返りとして、より多くの人に宣伝をすることが必須だ。そのため、視聴率の低迷は各局の死活問題となる。近年は視聴率だけでなく、オンデマンドをはじめ、ネットやモバイルも絡めたメディア制作にも各局、力を注いでいるが、やはりこの視聴率がテレビ局のイメージをアップダウンする大きな要因につながる。

 実際、フジテレビは各番組の視聴率の低迷は否めない。しかし、同社グループの当第2四半期連結累計期間の売上高は、映像音楽事業、生活情報事業、その他事業で減収となってはいるが、主力の放送事業と制作事業、広告事業が増収となり、また、サンケイビルとその子会社からなる都市開発事業の業績が新たに取り込まれたことで、前年同期比7.1%増収、また営業利益は、放送事業、制作事業が大幅増益となったことや、都市開発事業が加わったことにより、前年同期比36.3%増益。経常利益は、関西テレビ放送が当期の6月に持分法適用関連会社となり、負ののれんの発生を持分法による投資利益として計上したことで前年同期比81.4%増、四半期純利益も前年同期比100.6%増となるなど、好調をキープしている。今のところ表立った数字には出ていないが、ここ最近の深刻な視聴率低迷をいち早く打開することができなければ、今後の業績に大きな陰をおとすことになるだろう。

 高視聴率番組を連発しているテレビ朝日グループは、テレビ放送事業はもとより、音楽出版事業やその他事業においても収益確保に努め、当第2四半期連結累計期間の売上高は前年同期比7.4%増収、売上原価、販売費及び一般管理費の合計は前年同期比7.0%となり、結果、営業利益は前年同期比19.2%増益に。また、経常利益は8.3%増益、四半期純利益は前年同期比2.9%減益となっており、数字だけで見ると、安定はしてはいるもののまだ飛びぬけて好調、というわけではないようだ。この勢いを2013年もキープすることができるかが、真の王者になれるかの大きな課題になってくるだろう。

 実際、フジテレビも「ほこ×たて」や「逃走中」など、ヒット番組は複数あるものの、やはり雑誌やインターネットで「低迷」が煽られていることで、さらにイメージダウンが広がっているようだ。また名物ディレクターが旬のタレントを使い番組を作る、フジテレビのこの方式は時代の流れとともに変革することなく継続した事でマンネリから“飽きられ”、その矛先を“韓流”という安易な打開策に走ったことが視聴率の低迷につながっていったという見方もある。反対にテレビ朝日は、もともとタレントとのコネクションが薄く、制作予算も少ない、という弱点があったようで、華やかさがない部分を企画力でカバーしてきたことが、今の勢いにつながったとする関係者もいるようだ。

 前述にもあるように、オンデマンドをはじめ、ネットやモバイルも絡めたメディアづくりに力を注ぎ始めた各局だが、人気番組を作ることはイメージアップにつながることは確かである。収入を得るためのコンテンツがどれだけ増えても、やはり主である広告収入は重要だろう。今後のフジテレビがどのようなスタンスでコンテンツを考え、以前のように時代を先取りするようなヒット番組を生み出し、再び視聴率王座を奪還することができるのか注目していきたい。(編集担当:宮園奈美)