2015年4月24日、Apple社初のウェアラブルデバイス「Apple Watch」がついに発売され、日本でも大きな話題となっている。発売日にはTwitterやFacebookなどのSNSサイト上でも、Apple Watchの画像がタイムラインを大いに賑わした。興味のあるなしにかかわらず、Apple Watchの登場によって、ウェアラブルデバイスの本格的な普及が始まったとみて間違いないだろう。
MM総研が2013年に発表した「日米におけるウェアラブル端末の市場展望」によると、13年度は40万台だった日本国内のウェアラブル端末市場は、20年度には600万台を超えるまでに成長することが予測されている。ちなみに同社の別の調査では2014年度の日本国内のスマートフォン出荷台数は前年比5.3%減の2770万台となっている。スマホの台数には当然のごとく及ばないものの、後発でありながらスマートフォンの5分の1に近い出荷数を見込む巨大市場という見方もできる。
ウェアラブル端末自体は、すでにApple以外の各社から発売されていた。中でも2012年に発表された米グーグル社の眼鏡型ウェアラブル端末「グーグルグラス」は日本でも大きな話題となった。残念ながら、今年1月に製造中止となったものの、同社では単独部門を設立し、今後も取り組みは続けていくという。
一方、米スポーツ用品メーカーのNikeが販売している「FuelBand」や、NTTドコモ<9437>とオムロンヘルスケアの合弁会社であるドコモ・ヘルスケアが開発・販売している「ムーヴバンド」などのリストバンド型ウェアラブル端末は、主にヘルスケア市場においてすでに需要が定着しており、今や欠かせないアイテムとなりつつある。
これまでは、様子見していたユーザーも、Apple Watchの登場によってウェアラブル端末への興味が喚起されることになるだろう。爆発的な普及を遂げたスマートフォン市場も昨年あたりから新規需要が停滞傾向にあり、消費者は新しい刺激を求めている。この様な状況もウェアラブル端末にとって絶好の追い風となりそうだ。
そんな中、ウェアラブル端末開発の重要なキーワードである「小型軽量化」と「デザイン性」を促進する技術が、日本の半導体大手、ローム<6963>から発表された。今回、ロームが発表したのは業界最小クラスの小型低背パッケージLED PICOLED「SML-P1シリーズ」のカラー拡充だ。ウェアラブル機器市場の拡大にともなって、消費者の心を捉えるために必要なデザイン性を高める一つの手段として、通知機能などに使用する小型LEDの豊富なカラーバリエーションがある。これまでロームの同シリーズでは8色をラインアップしていたが、同社の強みである素子からの一貫生産体制によって、課題であった波長のバラツキを低減したことで、新しく中間色7色をラインアップに加えることに成功。汎用として業界で初めて15色のカラーバリエーションを取り揃えた。同社では、高輝度タイプの製品においてもカラーラインアップを拡充し、さらにシリーズを強化していくという。
Apple Watchの登場によって、市場はどう動くのだろうか。発売以来、品薄状態が続いているといわれている一方で、一部の量販店では予約なしでも購入できたという話もあり、未だ本当の売れ行きが見えにくいのが現状だ。しかし、Apple Watchによってウェアラブル端末の存在が一般的な認知が高まった今、高機能なウェアラブル端末を普通に身に付ける未来がすぐそこまで来ていることだけは確かだろう。ロームをはじめ、関連する技術系企業はすでに、そんな未来を見据えて活発に動き始めている。超小型部品の製造技術でアドバンテージのある日本企業の躍進に期待したいものだ。(編集担当:藤原伊織)