内閣府の意識調査では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」と考える人が2009年の前回調査と比べ10.3ポイント増え、51.6%となった。反対は45.1%。この質問を始めた1992年から2009年まで一貫して賛成が減り、 反対は増える傾向が続いていたが、今回初めて反転。賛成が反対を上回るのは、97年の調査以来15年ぶりとなった。
世代別に見ると、「夫は仕事・妻は家庭」に賛成する人は、全ての世代で増加している。中でも20代は20ポイント近く増加。20代男性は55.7%に達した。
この理由を、内閣府は「東日本大震災後の家族の絆を、より重視する傾向の表れ」とみているが、これではなぜ20代の賛成者が大幅に増加したのか分からない。若者の意識の変化を、震災の一言で片付けるのは無理があるだろう。
20代の男女が、一見保守的に見える家庭観に惹かれているのはなぜだろうか。彼らは物心ついた時から不景気で、日本の景気はどんどん悪くなると言われ続けてきた世代。「大黒柱」を期待される男性の給料は、90年代後半から下落し続けている。
両親や祖父母が経験した当たり前の生活が、今や得がたいものとなっているのだ。そんな現代の若者たちが思い描く「豊かな生活」が、昭和型の「夫は外・妻は家庭」という家族モデルだったとしても不思議ではない。
とはいえ、この家族モデルの歴史は意外に短く、高度成長期に一般化したものにすぎない。都市化とともに、年功序列賃金に守られた夫の収入により女性は専業主婦になることができた。団塊世代の生涯未婚率は5%に過ぎなかったが、彼らの子どもである団塊ジュニア世代の生涯未婚率は15%まで高まることが予想されている。団塊世代が結婚した70~80年代は専業主婦率が最も多かったが、専業主婦率は減少を続け、今では共働き率の方が高い。
「夫は外・妻は家庭」は、高度成長期にしか実現できなかった稀有な家族像なのだ。現代の若者たちにとって、それはあくまで「理想としてのファンタジー」として受け止められているのだろう。
2013年の今、未来を担う若者たちが支持する「理想」を、日本はもう一度取り戻すべきなのだろうか。