自民党 問われる議員、毅然とした総裁措置

2015年06月27日 12:03

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自民党の木原稔青年局長が代表をつとめる同党若手議員らによる勉強会「文化芸術懇話会」。25日会合の出席議員の発言が『民主主義の根幹も理解していない』と物議を醸している

 自民党の木原稔青年局長が代表をつとめる同党若手議員らによる勉強会「文化芸術懇話会」。出席議員から「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番だ。経団連に働きかけてほしい」。講師の百田尚樹氏からは「沖縄の2つの新聞(沖縄タイムス・琉球新報)は潰さないといけない」などの発言があったということが、26日の衆院安保特別委員会で取り上げられた。

 発言は25日の会合であったとし、『民主主義の根幹も理解していない』と物議を醸している。講師の百田尚樹氏の沖縄に対する発言にも批判が集まる。同じ自民党の宮崎政久衆院議員(九州ブロック)は文書で『看過できない』と木原青年局長に抗議した。

 菅義偉官房長官は同日夕の記者会見で「政府の立場でのコメントは控えたい」としながらも「政治家は誤解を受けるような発言は避けるべき。少なくとも選挙で国会に出てきたのだから、自らの発言には常に気をつけるべき」と苦言を呈した。また、事実関係についての確認について「党内できちんとやるべきだと思う」と語った。また、報道されていること(発言内容)が事実なら「非常識だ」「誰から見てもそうだと思う」と憂慮。「国会議員は自らの発言に責任を持つべき」と語った。

 議員らの問題発言は衆院安保特別委員会で、民主党の寺田学議員が26日取り上げた。寺田議員は、新聞報道として、文化芸術懇話会に出席した議員から「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番だ。経団連(日本経済団体連合会)に働きかけてほしい」「(安保法案成立へ)悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」との発言があったとマスコミが報じたと紹介し、「自分たちの意にそわないところを、広告料収入を減らし、干上がらせて圧力をかけようというようにもとられかねない発言だ、この発言は事実か」と質した。

 また、百田氏の発言についても「百田氏は出席議員の質問に答える中で 『沖縄の2つの新聞は潰さないといけない。沖縄のどこかの島でも中国に乗っ取られたら目を覚ますはずだ』『もともと普天間基地は田んぼの中にあった。そこを選んで住んだのは誰やねんと言いたくなる』『沖縄の米兵がレイプ事件を起こしたことが過去何例もある。けれども、米兵が起こした(レイプ事件)よりも、沖縄県全体で沖縄県民自身が起こしたレイプ犯罪の方が、はるかに率が高い』『ほんとにそういう左翼の扇動に対して立ち向かう言語とデータを持って対抗しないといけない』ということで締めくくられているそうだ」としたうえで、これについても新聞報道が事実かどうか、確認を求めた。

 勉強会には若手議員だけでなく、加藤勝信官房副長官、萩生田光一総裁特別補佐も出席していたという。

 加藤副長官は「副長官としてではなく、一議員として出席した」と認め「うちうちの勉強会だったので、発言は控えたい」と内容に言及しなかった。また百田氏が講演を終えたところで退出したとし、その後の百田氏と出席議員らとの質疑応答の場にいなかったとした。

 寺田議員が指摘したことについては午前と午後の審議の休憩時間内に、衆院安保特別委員会の浜田靖一委員長が「そうした主旨の発言があった事実を確認した。私としては甚だ遺憾と思う」と午後の審議入り冒頭で事実であることを明確にした。

 安倍晋三総理は午前の審議と午後の審議の間にも他の公務もあり、事実関係を自ら確認する時間はなかったとした。

 そのうえで安倍総理は自民党総裁として「報道の自由は民主主義のまさに根幹をなすものであり、尊重されるのは当然で、報道の自由を尊重するというのは私の一貫した立場であるし、党としてもそうだ」とし「その考え方は党内において徹底していく。今後は襟を正していく」と答えた。

 沖縄については「普天間基地の固定化は断固あってはならない。19年ぶりにやっと動いているので、負担軽減を進めながら、普天間基地の移設をしっかりと進めていくことで、沖縄の皆さんに対する責任をしっかり果たしていきたい」とした。

 日本共産党の志位和夫委員長は「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」との報道に「これは酷すぎる。メディア全体の報道の自由への挑戦だ。参加した政府高官や自民議員はこの暴言にどういう対応をしたのか」また「作家の暴言を諌めるどころか、一緒になってメディアへの圧力を公言している。 政権与党としての自民党の責任は重大だ。安倍首相・総裁に調査と謝罪を求める」と非難した。

 任意とはいえ、党青年局長が代表をつとめる勉強会で、講師の発言、さらに議員の発言は「その職にある資質を疑われても仕方ない」発言だ。政権与党として、適切な対応こそ厳しく求められる。襟を正すなら、こうした問題発言をする議員について毅然とした対処をすること。その措置を公にすることで党としての姿勢を示して頂きたいと期待する。任意の勉強会とはいえ、自民党の勉強会のレベルが懸念される。(編集担当:森高龍二)