【今週の展望】上海市場の行方が日経平均の下値を左右する

2015年07月05日 20:34

 この調子ならSQ週の今週も乗り切れそうに思えるが、たとえマイナーでもSQ週はSQ週。「鬼門」の火曜日(7日)、水曜日(8日)に警戒を怠ると痛い目にあいかねない。特に8日発表の景気ウォッチャー調査は、景況の「肌感覚」を反映して6月のユニクロの予想外の売上不振を裏付けるような数字が出てくるかもしれず、油断ならない。今週発表される小売、外食の大手銘柄の3~5月期決算も、マーケットに波乱とまではいかなくても、波紋ぐらいは投げかけるかもしれない。

 とはいえ、日本時間の6日朝、5日投票のギリシャの国民投票の大勢が判明してから東京市場の取引が始まるのは決して悪くない。債権団の要求に対して賛成多数なら望ましいシナリオだが、もし反対多数でもそれはそれで一つの区切りがつく。マーケットが最も不安を抱く「この先、どうなるかわからない」という状況はその時点で終わっているからだ。国民投票が「ノー」だったら、あとは国家債務のデフォルトと国有財産の整理、ユーロ圏離脱、新ドラグマ通貨への切り替え、欧州連合(EU)離脱など想定される手続を粛々と進めていくだけ。19世紀のように大勢の移民が目に涙を浮かべ、経済が無残に破たんした愛する祖国を離れていくというテオ・アンゲロプロス監督の映画のような哀しいドラマが始まるのは、その後になるのだろう。

 ギリシャ問題に区切りがつけば、あとは中国。今週はどこで下げ止まるのか? どこまで戻すのか? 上海市場の動きから目が離せなくなりそうだ。中国の金融当局は下落を食い止めようと躍起だが、これが「バブルの崩壊」であれば根は深くリスク要因としてイヤでも意識せざるを得ない。都合が悪いことに今週は上海市場で新規IPOの公募案件が多く、上場株の売買に投資資金が回りにくくなる。上海や香港は東京と取引時間が重なるので、後場、日経平均の思いもよらぬ下落の引き金になる恐れがある。

 それらを頭に入れた上で3日の日経平均終値20539.79円のテクニカル・ポジションを確認しておくと、25日移動平均20411円、5日移動平均20380円、75日移動平均19993円は全て下にある。

 日足一目均衡表の「雲」は19791~20128円に位置する。前週は大幅安の6月29日の日にも、雲にも75日線にもタッチしなかった。今週は雲の下限は19791円で一定だが、上限が6日の20174円から10日の20232円へと徐々に上昇していく。雲の上限は下値のサポートラインになるが、3日時点でそれとは411円もあいている。今週のチャートについて言えばこの雲よりも、2日朝にあけ、3日の安値でも20346~20431円の85円分が埋めきれなかった「マド」のほうが気になるだろうか?

 ボリンジャーバンドは25日線-1σの20180円と+1σの20641円の間のニュートラル・ゾーンに位置している。前週の7月1日以降の3日間の値動きはこのゾーンの中におさまっていた。

 オシレーター指標も、「買われすぎ」でも「売られすぎ」でもないニュートラルなものばかり。25日移動平均乖離率は+0.6%、騰落レシオは96.8、サイコロジカルラインは8勝4敗で66.7、RSI(相対力指数)は53.1、RCI(順位相関指数)は+14.0、ストキャスティクス(9日・Fast)は43.5、ボリュームレシオは60.0となっている。

 ニュートラルな位置なら、上にも下にも同じ程度、振れやすくなるが、上値は6月23~26日のような終値20700円台、20800円台は考えにくい。あの時はギリシャ問題が6月30日までにカタがつくという楽観的な見方があったが、その後、チプラス首相が国民投票という奇手に打って出て債務の一部が「延滞」になっては覆水盆に返らず。国民投票の結果次第で上値追いしても、終値はボリンジャーバンドの25日線+1σの20641円近辺までが限界とみる。

 一方、下値は今週も不確実な要素が存在する。SQ週の火曜日、水曜日という「鬼門」は、以前よりも需給が改善して、しかもマイナーSQという点を考慮すると、下げてもザラ場中に100~200円程度だろうか。とすると2日朝にあけて3日には下げても埋まらなかった「マド」の下端20346円が3日終値の193円下なので、ピタリとはまる。

 とはいえ、もう一つの不確実な要素として「上海」を忘れてはいけない。今週も上海総合指数がズルズルと下げ止まらない事態に陥ったら、日経平均も上値は抑えられる、下値はどんどん切り下がるで影響は免れない。その「上海リスク分」として150円程度の下げ幅を下に追加すると、ボリンジャーバンドの25日線-1σの20180円近辺が今週の下値のメドになりそうだ。そのすぐ下では日足一目均衡表の雲がわき上がって上限が迫ってくるが、これはサポートラインになり2万円割れを阻止してくれると見込まれる。

 ということで、SQ週と上海市場のリスクを見込んで今週の日経平均終値の変動レンジは20200~20650円とみる。マーケットには引く波動もあれば、寄せる波動もやって来る。中には、不思議な形の波もある。「時おり、波は何かに気をとられ、自分が波であること、七秒ごとに繰り返さねばならぬことを忘れて、波頭のまま宙に一分近くもとどまることもありました」(ジュール・シュペルヴィエル『海に住む少女』永田千奈訳)(編集担当:寺尾淳)