今年の4月に上海で開催された「第17回中国国際ボートショー」は日本をはじめ23の国と地域から450社以上が出展。中でも今年度から本格的な取り組みを開始したヤマハ発動機は、室内展示では最大規模の大型ブースで出展した。
IMFのデータによると、2010年に10.45であった実質経済成長率が2011年は9.24となり、2012年には8.23になると予測されているなど、勢いに鈍化がみられるものの依然高い経済成長が続く中国。市場が成熟するにつれ中産階級の人口も増加し、数年後には1億世帯に達するとも言われているという。こうした状況を受けて注目を集めているのがレジャー産業である。
中でも、広大な国土に1万8000kmを越える海岸線と6500以上の島々、そして2万4800もの湖を持つ中国では、こうした高い潜在能力を背景にマリンレジャービジネスが世界中から注目を集めている。ボートショーも国内20の地域で開催され、生産拠点やマリーナ等のインフラ整備、そしてそれらを後押しする政策を得て、さらマリンレジャー産業が急速に発展、さらに拡大を続けているという。このことを裏付けるのが、今年の4月に上海で開催された「第17回中国国際ボートショー」である。日本をはじめ23の国と地域から450社以上が出展し、アジア最大となったこのボートショーには、2011年比40%増の31835人が、世界70カ国以上から来場している。
日本企業も多く参加しており、中でも今年度から本格的な取り組みを開始したヤマハ発動機は、室内展示では最大規模の大型ブースで出展。中間所得層の拡大を背景に、「中・小型艇で、家族・友人と釣りやクルージングを楽しむプライベートなレジャースタイルが形成される」との予測のもと、ボートや水上オートバイ・船外機等を紹介するとともに、伝統と技術に裏打ちされた高品質なメイド・イン・ジャパンの信頼と、総合マリンメーカーとしての存在感をアピールした。依然ヤマハのボート事業については中国では広く知られていないため、現在は各地のボートショーへの出展を中心にPR活動に力を入れているという。
中間所得層の拡大とともに、中国国務院がレジャー産業を国民経済戦略の支柱産業として育成し新興産業や経済成長点として育成支援していくことを提案して以降、注目を集め拡大してきたマリンレジャー産業であるが、反面、その普及にはいくつかの課題も指摘されている。省ごとに異なる運航規制や課税等の法令、ビジネスの秩序づくり、そのための情報公開やアフターサービスの整備等の課題に加え、ボート免許や船舶検査の導入・人材育成等、多くのハードルがあるという。規制や法制度の面で出来ることは少ないかもしれないが、整備や人材育成などに関するハードルが存在することは、ある意味で日本企業にとって商機があるとも言える。日本国内では減退傾向にあるマリンレジャー産業が、中国においていかなる動向を見せ、日本企業がどう関わって行くのか、注目に値するのではないだろうか。