少子高齢化などにより市場が縮小傾向にあるにも関わらず、全日本菓子協会のデータによると生産額はここ数年横ばいで推移している製菓市場。この製菓市場は、ハロウィンやクリスマスといったイベント、果てには受験にまで結びつけてキャンペーンを展開するなど、秋から冬にかけて最盛期となる。中でも、今や販促キャンペーンとしてのイベントではなく一般的な行事ともいえる程にまで浸透したのがバレンタインであろう。
そのバレンタインに関し江崎グリコ<2206>が、全国の女子中・高・大学生・20代OL400人と30代~40代の母親200人を対象に実施したバレンタイン市場調査の結果を発表した。これによると、バレンタインは、「恋人を作る日」(10.5%)から「感謝の気持ちを伝える日」(41.3%)へと変化してきており、バレンタインは告白の日から「チョコを媒介にしたコミュニケーションの日」になりつつあるという。それはバレンタインでチョコをあげる対象に関する結果にも表れており、1位が「女友達」で68.5%、2位は父親で44.3%、3位が「彼氏」の38.0%となっている。近時「友チョコ」なる言葉が一般化してきたことも、このデータを裏付けるものと言えるであろう。
さらに本調査結果で注目すべきは、「友チョコは小学生の頃に始まり、中学生で本格化」するという結果や「中学生はお小遣いが赤字(おこづかい2268.5円<バレンタイン出費2724.8円)になっても、バレンタインはきちんと実施」というように、中学生に暴走がみられる点であろう。中学生にとっては「お正月」(13.0%)よりも「バレンタイン」(32.0%)の方が大事だという点には、驚きや呆れを感じる人も少なくないのではないだろうか。
少子化に伴う対象者の減少によりバレンタインにおけるチョコレート市場の縮小を懸念した製菓業界が、対象を思春期の男女から友人や家族にまで広げ、それが功を奏しつつあるともとれる今回の調査結果とその発表。事実、菓子生産額は横ばいから微減傾向にあるにもかかわらずチョコレート生産額は、平成17年に一度は減少したものの右肩上がりを続けており、平成23年には3200億円を超えている。これはバレンタインだけが要因ではないであろうが、一役を買っていることも間違いはないであろう。市場が拡大することは喜ばしいことであり、企業努力や戦略のたまものと言える。一方で、データに現れた中学生の動向を考えると、消費者側に一考を促す必要があるのではないだろうか。