日経新聞、約1600億円で英フィナンシャル・タイムズを買収、「総合効果」は未知数

2015年07月24日 07:30

 日本経済新聞は23日、英国の有力経済誌フィナンシャル・タイムズを発行する「フィナンシャル・タイムズ(FT)グループ」を100%買収することで、同社の親会社である英ピアソンと合意したと発表した。買収価格は8億4400万ポンド(約1600億円)。メディアブランドとして世界屈指の価値を持つFTグループを日経グループに組み入れ、グローバル報道の充実とデジタル事業など成長戦略の推進につなげるのが狙いという。日本のメディア企業による海外企業の買収案件としては、過去最大規模となる。

 英フィナンシャル・タイムズは1888年に創刊。本社はロンドンで、経済・ビジネス分野を扱うメディアとして世界的な影響力をもつ。紙面と電子版を合わせた発行部数は73万7000部で、うち7割の約50万人が「電子版の購読者」という。朝刊の発行部数が273万部の日経新聞も、2010年以降は他社に先駆けて「電子版」の普及に注力。その有料会員数は43万人に達している。日経新聞がフィナンシャル・タイムズの買収に踏み切った背景には、デジタル版の「成功」があるといえるだろう。同社によると、経済・ビジネス分野はデジタル時代に「成長が期待できる」といい、今後はそれぞれの顧客基盤を活かしてさまざまなデジタル事業に取り組んでいくという。

 買収が正式なニュースとなる直前、23日には日経新聞がみずから、ロンドンからの情報として「ピアソンが23日、傘下の英紙フィナンシャル・タイムズ事業の売却に向けて交渉を進めている」と報じていた。記事によると「交渉相手は明らかにしていないが、ロイター通信は同日、『グローバルなデジタルニュース会社』と報じた」という。その直後に日経新聞が「交渉相手」と分かると、複数メディアが速報で報じた。

 教育、出版事業に力を入れる英ピアソンは、FTの事業を切り離すことで、教育事業に経営資源を集約する狙いがある。一方、ピアソンのジョン・ファロンCEOは、「メディアの変革期において、フィナンシャル・タイムズの価値を最も高める道は世界的なデジタル企業と統合することであり、日経の下でさらに繁栄すると信じている」と述べている。日本的な記者クラブ制度や、経団連との密接な関係に守られた日本経済新聞とフィナンシャル・タイムズが、どのくらい「文化」を共有できるのかは未知数だが、今後の動向に注目したい。(編集担当:北条かや)