21世紀の産業革命? 無線も簡単に搭載できる電子工作最新事情

2015年07月25日 19:27

ローム マイコンボード

拡大する電子工作市場。新規参入したラピスセミコンダクタは、Arduino互換のマイコンボードLazuriteシリーズの第二弾となる920MHz帯無線通信付きモジュールパッケージ版「Lazurite Sub-GHz」の販売を開始した。

 今、電子工作が驚くべき進化を遂げている。電子工作といえば、理科好きの小・中学生が夏休みの宿題などで作る、簡単なスイッチや電動のオモチャなどを想像する人が多いかもしれない。しかし、最先端の電子工作はもはや我々がイメージする「工作」の域を遥かに超えている。

 電子工作に驚異的な進化をもたらした要因は大きく3つある。1つはインターネットの普及、2つめは簡単に使えるマイコンボード、そして3つめは3Dプリンタだ。インターネット環境が整ったことで、オープンソース化された世界中の先端技術に簡単にアクセスできるようになった。そして、初心者でも扱えるArduino (アルドゥイーノ)などのマイコンボードがアイデアの実現を容易にし、それを3Dプリンタで形にすることまで可能になった。さらにインターネットを介して世界中に発信され、情報が共有されることでさらなる進化を促している。

 文部科学省でも、マイコンボードやスマートフォン、パソコンなどの一般的な開発環境を利用して、初等中等教育段階におけるプログラミング教育を推進している。小学校ではフローチャート式のプログラミングなどを行い、中学校では簡単なロボットの制作、高等学校になるとC言語やセンシング技術の基礎などを学びながら、より高度な電子工作に挑む。さらにそれが発展すれば、3Dプリンタを利用して全く新しい製品を開発することも、もちろん可能だ。

 これに伴い、センサ市場も活発に動いており、2020年にはセンサ市場は1兆個、IoT/M2M端末は2019年には9億台を超える成長が予測されている。また、教育及びIoT市場の拡大を見越して、これまで独壇場だったArduinoに代わる国産マイコンボードの開発も着々と進んでいる。2012年にルネサス エレクトロニクス<6723>と若松通商が共同で提供をはじめた「がじぇルネ」ソリューションのGRリファレンスボード「GR-SAKURA」「GR-SAKURA-FULL」、そしてロームグループ<6963>のラピスセミコンダクタも今年度からこの市場に新規参入し、Arduino互換のマイコンボードLazurite(ラズライト)シリーズを発表している。

 Lazuriteシリーズは後発ながら、低消費電力チップの搭載に加えて間欠動作する低省電力動作モードを搭載しており、Arduinoと比較して待機時の消費電力を90%削減。電池やバッテリーで動作させることの多い電子工作で、長時間駆動を可能にすると大きな期待が寄せられている。さらに同社では、第一弾となった「Lazurite Basic」に続き、7月16日には、最適化済みの920MHz帯無線通信付きモジュールパッケージ版「Lazurite Sub-GHz(ラズライトサブギガヘルツ)」の販売を開始している。同製品は920MHz帯無線通信によるデータの送受信が簡単に行えるため、各種センサとの連携で簡単にIoTのプロトタイプを実現することができる。初心者でも遠隔操作の無線システムが容易に構築できるようになるだけでなく、応用次第では、環境、農業、工業などの専門的な用途にまでが活用の幅が拡がりそうだ。

 設計図通りに組み立てるだけだった電子工作から、自由なイメージをかたちにできる電子工作へ。上級者の間ではマルチコプターなどの自作ドローンの開発やセンサの開発も盛んになりつつあり、事業への活用なども始まっていることから、21世紀の産業革命という声もあるようだ。いずれにしても、本格的なブームが到来する前に、少し勉強しておいた方が良いかもしれない。(編集担当:藤原伊織)