ディーゼル車が国内で一般ユーザーにも認知されつつある。排ガスが汚いという負のイメージを覆すクリーンディーゼル車の普及に伴い、燃費性能の高さや太いトルクを利した力強い走りが一般にも評価され、販売台数を伸ばしている。
ディーゼルエンジンを搭載した乗用車の国内販売が本年暦年で、19年ぶりに10万台を超えるのが確実になった。マツダや輸入車で新型車の投入が相次ぎ、1~6月の登録車はすでに昨年1年間の実績を超え、8万0186台と前年同期比で2.2倍に膨らんだ。2000年代に環境規制で2000台強/年に落ち込んだディーゼル車が技術革新で復権を果たした結果といえる。暦年年間販売15万台は完全に射程に入った。
マツダは昨年発表した新型1.5リッターディーゼルエンジンをコンパクトハッチバック車「デミオ」に搭載、軽自動車とハイブリッド車以外で国内最高の低燃費を実現、市場拡大に弾みを付けた。
日本自動車販売協会連合会によると2015年上期のディーゼル乗用車の販売の牽引役はマツダで、昨年の量販車種の小型車「デミオ」に設定したほか、コンパクトSUV「CX-3」はディーゼルエンジン搭載車だけの大胆な設定とした。販売は合計で約6万2000台と国内ディーゼル車市場全体の約80%を占めている。
ディーゼル車が普及している欧州では1.5リッタークラスの競争が激しい。単に燃費がいいだけでなく、走りを楽しめるクルマが求められる。そう判断したマツダは、独自の低燃費技術「SKYACTIV(スカイアクティブ)」を活用した2.2リッターディーゼルエンジンを3車種に搭載。搭載車のうちSUV「CX-5」では約80%、中型車「アテンザ」では約70%のユーザーがディーゼル車を選んでいる。デミオ、CX-3などの小型車でも選択肢としてディーゼルエンジン車需要の底上げを狙う。
トヨタ自動車もSUV「ランドクルーザープラド」に新型ディーゼルエンジン搭載車を追加発売したほか、輸入車でもボルボが一気に5車種に新型2リッターディーゼルを搭載して発売した。独勢ではメルセデス・ベンツがすでに数車種に環境に優しい“ブルーテック”としてディーゼルを搭載。BMWもセダンやステーションワゴン、SUVに搭載している。独フォルクスワーゲンも来春早々に大量投入する予定だ。
燃費が良いディーゼル車は、1980年代後半に5%程度の販売シェアがあったが、大気汚染の原因として槍玉とされ販売台数が急落。2010年までは年間1万台以下で推移していた。
ただ、排ガス規制の強化に加え、自動車メーカーが研究開発に注力。大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)などを抑えるクリーンディーゼル技術が確立し、欧州でエコカーの代名詞になった。国内でもマツダのほか独BMW、独メルセデス・ベンツなどの欧州車が牽引し、2014年に前年比4.5%増の7万9565台を記録。この3年間でみると約9倍に拡大した。充電器の普及不足で伸び悩む電気自動車(EV)の約5倍である。
この4月から厳しくなったエコカー減税でもクリーンディーゼル車の税減免が続く。ディーゼル車は一般的に同じ車種のガソリン車に比べて数10万円高い。が、燃料に使う軽油はレギュラーガソリンより10~20%程度安い。年間走行距離にもよるが、年1万km以上走るなら、3年程度でイニシャルコストの差を取り戻せるとして人気が高まっている。(編集担当:吉田恒)