2016年1月に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)が施行される。これに伴い、「マイナンバー制度」ならびに「法人番号制度」がスタートするが、さまざまな分野への影響が考えられている
2016年1月に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)が施行される。これに伴い、「マイナンバー制度」ならびに「法人番号制度」がスタートするが、さまざまな分野への影響が考えられている。
東京商工リサーチでは、全国の企業を対象に「マイナンバー法のスタートに関するアンケート」を実施した。これによると、6割の企業が「マイナンバーにメリットがない」と答える一方、2割の企業はビジネスチャンスと捉えて期待感を持っていることもわかった。しかし、5割の企業が「情報漏洩」を懸念し、最大のデメリットと考えていることがわかった。
まず、マイナンバーのメリットについては、全体では「メリットはない」が3,258社(構成比65.9%)で最多、次いで「情報管理がしやすくなる」が742社(同15.0%)、「業務の効率化」が518社(同10.5%)と続く。6割以上の企業が制度にはメリットがない、と否定的な回答を寄せた。「メリットはない」としたのは、大企業が739社のうち465社(構成比62.9%)、中小企業等でも4,203社のうち2,793社(構成比66.5%)と比率に大きな開きはなかった。
次に、マイナンバーのデメリットについては、全体では「情報漏洩リスク」が2,634社(構成比53.3%)で過半数を占め最多だった。次いで「業務の煩雑化」が750社(同15.2%)、「業務量の増加」が596社(同12.1%)、「コスト増加」が409社(同8.3%)の順で、業務への負担を指摘する回答が1,346社(同27.2%)で3割を占めたとしている。「情報漏洩リスク」との回答は、大企業は387社(同52.4%)、中小企業等では2,247社(同53.5%)で、そのほかの回答についても構成比率に大きな差はみられなかったという。
マイナンバー制度導入の準備については、全体では「検討中」が2,841社(構成比57.5%)で約6割を占め最多。次いで「未検討」が1,579社(同32.0%)、「システム設計・改修中」が386社(同7.8%)、「概ね完了」は136社(同2.8%)の順。「未検討」は30%を超えたのに対し、「概ね完了」はわずか2.8%にとどまった。「未検討」と回答したのは、大企業が約1割(12.9%)だったのに対し、中小企業等では3割以上(35.3%)と、大企業に比べ中小企業等の準備の進捗が遅れていることがわかった。
そして、自社のビジネス展開へのマイナンバー・法人番号制度の影響については、全体では「影響はない」が2,918社(構成比59.0%)で約6割を占めた。大企業、中小企業等別でも、それぞれ439社(同59.4%)、2,479社(同58.9%)で最多だった。しかし「新規顧客向け新商品・サービスの提供」「従来顧客向け新商品・サービスの提供」「新規顧客向け従来商品・サービスの提供」「従来顧客向け従来商品・サービスの提供拡大」「新規市場参入」から回答を1つ以上選択した、ビジネスチャンスとして捉えているのは933社で約2割(18.8%)を数えた。
同社ではこれらの結果により、「マイナンバー・法人番号制度」へのマイナス・イメージが先行するなか、今後はより多くの情報発信によって企業への認知度を高めるとともに企業の新たな取り組みを促し、ビジネスに結び付けるための方向性を示すことが求められるとまとめている。(編集担当:慶尾六郎)