7月31日、不適切会計問題で発表を延期した東芝<6502>を除く電機業界大手7社の4~6月期本決算が出揃った。各社の業績をひと言で言えば、ソニー<6758>は「復調」、パナソニック<6752>は「激しい事業間格差」、シャープ<6753>は「再建いまだ闇の中」、日立<6501>は「順調」、三菱電機<6503>は「コスト高で営業減益」、NEC<6701>は「想定内の最終赤字」、富士通<6702>は「想定外の最終赤字」というところ。通期業績見通し、年間配当予想の修正は1社もなかった。
■ソニーは利益がV字回復、日立は最も堅調
4~6月期の実績は、ソニーは売上高0.1%減、営業利益38.8%増、税引前当期純利益102.9%増(約2倍)、最終四半期純損益は207.5%増(約3.1倍)。エレクトロニクス事業を立て直す構造改革の効果で収益が回復し、赤字のスマホと映画を除く6つの事業が増益。特に画像センサーなどの電子デバイスと「プレステ4」向けのゲームソフトが好調だった。オリンパス<7733>株の売却益も寄与して、最終利益は4~6月期としては過去最高になった。
パナソニックは売上高0.3%増、営業利益7.0%減、税引前利益31.9%増、最終四半期純利益56.9%増。テレビ事業の営業損益が30億円の赤字で、家電は23%の営業減益、住宅関連は太陽電池も建材も住設機器が不振で43%の営業減益だったが、自動車向け電子部品や液晶、自動化機器が好調で35%の営業増益になった自動車・産業機器関連、その他の事業で補うことができた。為替の円安も1043億円の増収要因になっている。
シャープは売上高0.2%減、営業損益は287億円の赤字、経常損益は333億円の赤字、最終四半期純損益は339億円の赤字で、営業損益は前年同期の黒字から赤字に変わり、65億円の減損損失を計上して最終損益は赤字幅を拡大した。主力の液晶パネルが中国の景気減速で苦戦し、液晶テレビも空気清浄機も不振。スマホ向けカメラなど電子デバイスの伸びでは補えなかった。6月に5億円に減資した後、2250億円の優先株を発行する資本増強策を実施している。
日立は売上収益6.9%増、税引前利益23.2%増、四半期利益34.8%増、最終四半期利益31.3%増の増収増益。利益は2ケタ増で好調だった。社会インフラ関連で引き続き強みを発揮。北米で高機能材料、自動車部品などが伸び、英国の総額1兆円規模の都市間高速鉄道プロジェクトが本格的に収益に貢献し、中国の景気減速で苦戦した建設機械などの落ち込みをカバーした。
三菱電機は売上高8.5%増、営業利益7.9%減、税引前四半期純利益1.0%減、最終四半期純利益7.7%増の増収、最終増益。営業減益の主な原因は電力関連のシステム構築案件で技術者の増員を要しコストアップになり、損失引当金が膨らんだこと。前年同期と比べて税負担が軽減したことで最終利益は増益になった。
NECは売上高2.0%減、営業損益は100億円の赤字(前年同期は70億円の赤字)、経常損益は77億円の赤字(前年同期は99億円の赤字)、四半期純損益は100億円の赤字(前年同期は101億円の赤字)。ITインフラのサーバーの販売やITサービスは好調でも、NTT<9432>やモバイルキャリアなど通信セクターの投資抑制に収益を抑えられた。
富士通は売上収益0.3%減、営業損益は273億円の赤字(前年同期は72億円の黒字)、税引前損益は168億円の赤字(前年同期は104億円の黒字)、四半期損益は176億円の赤字(前年同期は61億円の黒字)、最終四半期利益は189億円の赤字(前年同期は68億円の黒字)という四半期ながらも赤字決算。ユビキタスソリューション部門の営業損益が大幅に悪化して最終赤字に陥った。パソコン事業でドル建ての部材調達コストがドル高で上昇した上に、ヨーロッパ向けがユーロ安の影響で売上減になり採算が悪化するという、想定外の出来事もあったという。
■シャープは中間期で営業黒字に変われるか?
2016年3月期の通期業績見通しは、ソニー<6758>は売上高3.8%減、営業利益367.2%増(約4.7倍)、税引前当期純利益769.0%増(約8.6倍)、最終当期純損益1400億円で3年ぶりの黒字転換、予想年間配当未定(中間配当10円)で修正はなかった。4~6月期時点の進捗率は営業利益は30.2%、純利益は58.8%。吉田憲一郎副社長は「構造改革から成長投資に局面が変わった」と述べ、7月に公募増資などで約4000億円を調達している。
パナソニック<6752>は売上高3.7%増、営業利益12.6%増、税引前利益64.4%増、当期純利益0.3%増の増収増益、予想年間配当未定で修正はなかった。4~6月期時点の進捗率は営業利益は17.7%、純利益は33.0%。今期は「住宅と自動車」を軸に成長優先の増収路線にシフトするが、河井英明専務は「順調なスタートを切った」と述べている。
シャープ<6753>は売上高0.5%増、営業損益は800億円の黒字転換を見込み、経常損益、当期純損益(最終損益)の見通しは公表せず、予想年間配当は前期と同じく無配で修正はなかった。4~6月期の営業赤字が287億円で、通期の営業黒字見通し800億円に対する進捗率は-36%。中間期の100億円の黒字達成が疑問視されるが、高橋興三社長は「無理ではない」と述べた。液晶部門の構造改革の効果や国内のエアコン販売が猛暑で伸びることを期待している。
日立<6501>は売上収益1.8%増、税引前利益15.6%増、当期利益31.0%増、最終当期利益42.5%増で、予想年間配当は未定で修正はなかった。4~6月期時点の進捗率は最終利益は17.7%。最終赤字7873億円の「日立ショック」から6年。それを教訓に取り組んだ構造改革、全社横断的なコスト削減策が軌道に乗り、収益があがる体質が定着してきた。
三菱電機<6503>は売上高1.1%増、営業利益0.8%増、税引前当期純利益0.9%減、最終当期純利益6.3%減の通期業績見通しに修正はなかった。予想年間配当も未定で変わらず。4~6月期時点の最終利益の進捗率は21.0%にとどまっている。スマートメーター(次世代電力計)の需要が寄与して通期では電力関連の採算が持ち直すとみている。
NEC<6701>は売上高5.6%増、営業利益5.4%増、経常利益7.0%増、当期純利益13.4%増の増収増益の業績見通し、前期比2円増の6円の予想年間配当で修正はなかった。第1四半期の赤字は想定の範囲内で前期並みの水準につけており、官公庁のマイナンバー特需や企業のサイバーセキュリティ対策など国内のITサービス投資が増益に寄与して最終利益大幅増という見通しは変えていない。秋からどれぐらい伸びるか。
富士通<6702>は売上収益2.0%増、営業利益16.0%減、最終当期利益28.6%減の増収減益の通期見通し、前期と同じ8円の年間配当予想に修正はなかった。事業立て直しのための構造改革や人材育成などのコストがかさむため最終減益は避けられそうにない。(編集担当:寺尾淳)