【今週の展望】FOMCが利上げするかどうかは相場の分岐点

2015年09月13日 23:34

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マーケットは理屈だけでは成り立たない。経済理論的にみれば正しい決定でも、マーケット心理を逆なでして、大きな混乱を招くこともある。

 今週は、それに回帰できるかどうかを決定づけそうなイベントがある。言わずと知れたFOMCで、今年になってから「利上げ」という言葉を聞かぬ日はなかった。それがあるからNYダウは経済指標が良いと株価が下がり、悪いと上がるという倒錯現象が頻発してきたし、前々週、前週あたりはアメリカの利上げを亡霊のように恐れて、NY市場だけでなく東京市場でも上値が抑えられていた。

 そうなると「9月利上げ」はもはや、それを実施すればアメリカに長期金利の上昇、為替のドル高、株安をもたらし、それが世界のマーケットに影響するという経済理論的な意味を超えて、投資家心理に大きなインパクトをもたらす存在になっている。「いっそ、9月に利上げしてくれたほうがすっきりする」という声は、それを裏付ける。言い換えればそこには、「アメリカがまた利上げを先送りして、モヤモヤした状態がこの先も続くと考えると、うんざりする」という心理がある。

 つまり、経済理論的にみれば正しい決定でも、マーケット心理を逆なでして大きな混乱を招くこともあるのだ。経済理論の専門家が揃ったFOMCメンバーには行動ファイナンスの専門家はいない模様だが、経済理論一辺倒ではなく、市場心理をおもんばかった決定を下せるかどうかで、イエレンFRB議長以下、その器量が問われるのではないか。

 もしFOMCで利上げが決まれば、「ドル高円安で日本株高」のような教科書的な結果だけでなく、世界のマーケットに心理的な好影響も出るだろう。NYダウは下げても、東京市場では朝日のようにさわやかに上値追いができるようになる。これが今週の「利上げシナリオ」だ。

 その逆の「非利上げシナリオ」は、マーケット心理は改善しないまま夏の混迷をなお引きずる。上昇しても上値を抑えられ、悪材料が出ればボロボロ下げて乱高下。上海市場におびえる日々で、得られるのはかりそめの奇妙な果実ばかり。

 それを前提に11日の日経平均終値18264.22円のテクニカル・ポジションを確認しておくと、5日移動平均の18124円よりは上だが、200日移動平均の19095円、25日移動平均の19123円、75日移動平均の19984円よりは下。相変わらず移動平均の「層序」は乱れている。

 日足一目均衡表の「雲」は20033~20213円にあり、8月末の「プチ・パラダイムシフト」以前の「2万円台ワールド」の名残りをとどめている。今週は下限は20033円で固定され、上限は週初めに20351円から20328円に下がった後は横ばい。来週は23日に上限が最高地点に到達するが、26~27日の週末はねじれながらドンと下落してようやく「2万円台ワールド」に別れを告げるというスケジュールになっている。

 ボリンジャーバンドは25日線-1σの18006円と+1σの20240円の間に位置してニュートラル。そのゾーンは17000~19000円の「17000~18000円台ワールド」の上半分にかかっている。その上の19000円台にある200日線、25日線、75日線の3本の移動平均線は、上値追いをがっちりブロックする約3名のレジスタンス将軍だ。

 オシレーター系指標は、25日移動平均線乖離率こそ-4.7%で「売られすぎライン」の-5%に接近しているが、それ以外は、前々週末はあれだけにぎやかだった「売られすぎ」がことごとく解消した。ストキャスティクス(9日・Fast/%D)は65.1、RSI(相対力指数)は47.7、RCI(順位相関指数)は-32.2、サイコロジカルラインは5勝7敗で41.7、騰落レシオは70.9、ボリュームレシオは42.0である。ボリンジャーバンドともどもテクニカル指標も「17000~18000円台ワールド」に慣れて、なじんできたらしい。10月までには「雲」も降りてくる。そのように、朱に染まれば赤くなるようにレベルの低いところで安定し、定着していくが、8月に高く跳んで早期脱出できなかったのだから、しかたない。最初は状況に違和感を抱いて抵抗していても、結局はそれに順応してしまった人間の話は、世の中に掃いて捨てるほどある。

 バランスが悪かった需給はメジャーSQを通過して緩和しているはずで、前々週末のデータは参考にならない。41%を超えて史上最高水準だったカラ売り比率は、11日は35.5%まで低下している。

 そこへ今週、FOMCがある。利上げシナリオなら上値は200日線の19095円、25日線の19123円の手前の19000円付近まで考えられるが、非利上げシナリオなら9日の「異常値」を切り捨てた前週の高値18420円どまりだろう。そして非利上げシナリオの下値は11日の「まぼろしのSQ」18119円でも18000円でも防衛線にならず17700円あたりまで考えておく必要がある。今週の予想は、どこかの省庁の御用審議会の答申ではないが、そんな「両論併記」でいくしかない。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは17700~19000円とみる。

 泣いても笑っても、FOMCの結果がもたらされるのは今週17日。日本時間で18日未明である。あともう少しの辛抱なのか? それとも、もっと長く辛抱しなければならないのか? 「忍耐そのものは、べつに敗北ではないのだ……むしろ、忍耐を敗北だと感じたときが、真の敗北の始まりなのだろう」(安部公房『砂の女』)(編集担当:寺尾淳)