【今週の展望】FOMCが利上げするかどうかは相場の分岐点

2015年09月13日 23:34

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マーケットは理屈だけでは成り立たない。経済理論的にみれば正しい決定でも、マーケット心理を逆なでして、大きな混乱を招くこともある。

 今週、9月第3週(14~18日)は5日間の取引。東京市場は19~23日は祝日が3日入って5連休なので、18日の金曜日の次の営業日は24日の木曜日になる。最大の注目イベントは何と言っても、16~17日に開かれるアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)。利上げに踏み切るか、否かは、全地球的に秋のマーケットの行方を左右する。

 世界の主要な株式市場の休場日は、16日はマレーシアが「マレーシア・デー」で休場する。1963年にマレー半島のマラヤ連邦とシンガポール島、ボルネオ島の北部が統合してマレーシア連邦が建国した日。ただしシンガポールは1965年に分離・独立した。メキシコが「独立記念日」で休場する。1810年にナポレオン支配下のスペインから独立。17日はインドが「ガネーシュ祭」で休場する。ガネーシュは頭部がゾウのヒンズー教の神様で、インドのマスコット的な存在。

 国内の経済指標は、16日の訪日外国人客数の行方が気になるところ。「実業家ではない『株民』は日本に旅行しない」という見方もあるが、株式市場の混乱の影響で中国人の減り方が大きければ、小金持ちが近隣社会のジェラシーを封じるポトラッチ(贈答)という意味も帯びている「爆買い」で潤った、18日に8月売上高が発表される百貨店などインバウンド関連の株価に影響しそうだ。14~15日は日銀の金融政策決定会合。金融政策現状維持が有力だが、FOMCと政策の整合性をとるために数字を微調整するかもしれない。

 14日は8月の首都圏・近畿圏新規マンション発売戸数、7月の第三次産業活動指数、鉱工業生産指数・設備稼働率確報値、16日は8月の訪日外国人客数、17日は8月の貿易統計、日本製半導体製造装置BBレシオ、18日に8月の全国百貨店売上高、粗鋼生産量、電力需要実績が、それぞれ発表される。

 14~15日に日銀の金融政策決定会合が開かれ、通常なら15日の正午すぎに結果が発表され、午後3時30分から黒田総裁が記者会見を行う。16日に日銀から金融経済月報が公表される。16日に参議院本会議で安保関連法案が可決・成立する見込み。17~20日に千葉市の幕張メッセで「東京ゲームショウ2015」が開催される。17、18日はビジネスデイ。19、20日は一般公開。18日に8月6、7日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が公表される。

 主要銘柄の決算発表は、ホームセンターやドラッグストアの大手の他、東芝が遅れていた4~6月期決算を発表する。14日は東芝<6502>、アスクル<2678>、神戸物産<3038>、サンバイオ<4592>、アルデプロ<8925>、くろがねや<9855>、15日は銚子丸<9842>、ウインテスト<6721>、アークランドサカモト<9842>、16日はツルハHD<3391>、17日はクスリのアオキ<3398>が発表する。

 今週の新規IPOは3件。全て投資家に人気の東証マザーズ上場、IT・ネット関連で、直近の決算は黒字で資金吸収金額も分相応なので初値黒星の可能性は小さい。むしろ景気よく初値翌日持ち越しの有力候補だろう。

 14日にピクスタ<3416>が東証マザーズに新規上場する。東京が本社で写真、イラスト、動画などデジタル素材のネット販売サイト「PIXTA」を運営する。公開価格は1870円。15日にアイビーシー<3920>が東証マザーズに新規上場する。東京が本社で「性能監視ソフトウェア」の企画・開発、コンサルティングサービスを手がける。公開価格は2920円。17日にブランジスタ<6176>が東証マザーズに新規上場する。東京が本社で旅行雑誌「旅色」、ペット雑誌「PAPPINE」など電子雑誌の出版事業を手がける。公開価格は450円。

 海外の経済指標は、15日のアメリカの小売売上高、17日のアメリカの住宅着工件数が重要になる。

 14日はユーロ圏の7月の鉱工業生産指数、15日はドイツの9月のZEW景況感指数、アメリカの8月の小売売上高、鉱工業生産指数・設備稼働率、9月のNY連銀製造業景気指数、16日は英国の5~7月の失業率、アメリカの8月の消費者物価指数(CPI)、9月のNAHB住宅市場指数、7月の対米証券投資、17日はアメリカの8月の住宅着工件数、4~6月期の経常収支、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況感指数、18日はアメリカの8月のCB景気先行指標総合指数が、それぞれ発表される。

 14日にブリュッセルでEUが移民問題に関する緊急担当閣僚会合を開く。14~18日にウィーンでIAEA(国際原子力機関)の総会が開かれる。15日にNYの国連本部で今年の国連総会が開会する。会期は10月6日まで。16~17日にFOMC(連邦公開市場委員会)が開かれる。17日にイエレンFRB議長が記者会見を行って経済見通しを発表する。FF金利の切り上げ(利上げ)が発表されるかどうかが、今週、というより今年最大のマーケットの注目点。16日、アメリカの大統領選挙予備選挙に向けた共和党の第2回テレビ討論会が行われる。言いたい放題のドナルド・トランプ氏は『真夏の夜の夢』の妖精パックのような単なるトリックスターなのか、それとも本気なのかが試される。16日にタイ、17日にスイス、インドネシアで政策金利が発表される。18日にオーストラリア中央銀行のスティーブンス総裁が議会証言を行う。20日はギリシャの総選挙の投票日。災害もマーケットの災難も、忘れた頃にやってくる、か?

 アメリカ主要企業の決算は、16日にオラクルが発表する予定。

 外部要因にもみくちゃにされ続ける東京市場だが、決してお先真っ暗ではない。経済指標は「変調がみられる」と言われながら、アベノミクス以前の状態と比べると天地の違いがある。為替レートも企業業績も同様。この秋も、大きなイベントが控えている。

 9月10日、東証は日本郵政<6178>、ゆうちょ銀行<7182>、かんぽ生命保険<7181>の、いわゆる「郵政3社」の上場を承認した。上場日は3銘柄とも11月4日で、市場が東証第1部になるのはほぼ確実。

 日本郵政の初回売出し時の想定価格は1350円、時価総額は6兆750億円、ゆうちょ銀行の想定価格は1400円、時価総額は6兆3000億円、かんぽ生命保険の想定価格は2150円、時価総額は1兆2900億円で、3銘柄合計の時価総額は13兆6650億円にのぼる。そんな超巨大新規IPOが上場前後の需給に相当大きな影響を及ぼすことは必至で、直前には「郵政3社上場待ち」の買い控えも起こりそうだが、ひろく一般的な関心を呼び、「株式市場活性化」という点では大きなチャンスになることだろう。

 大事なのは、それに向けた地ならし。いつまでも荒海のような上下動を繰り返したり、まるで上海市場の「家来」のようにその値動きをトレースする相場が続いたら、ビギナー投資家は敬遠して入ってこなくなる。以前のように、日経平均は小さな調整が入りながらも徐々に水準を切り上げていく動きがベースで、ザラ場中は国内の経済指標や企業業績や政策や要人発言などで誰でも納得のゆくアップダウンが現れ、日中値幅は大きくても300円程度という状態に戻ることが必要だろう。