【今週の展望】高カラ売り比率は21000円チャレンジの兆候?

2015年08月16日 21:52

0205_002

国内の経済指標は何と言っても17日朝の4~6月期GDPに注目。マイナスになるのは堅いとみられているが、在庫など不確実な要素もある。どの程度のマイナスになるかで東京市場の株価への影響度が変わってくる

 今週、8月第3週(8月17~21日)は5日間の取引。お盆休みの私生活での「戦士の休息」を終え、日本経済が再起動する週になる。SQ日の翌週の週間騰落は、今年は4勝3敗、過去1年間では7勝5敗。データを見ると「SQ週は荒れて下落するが、SQ後週は持ち直す」とは、必ずしも言い切れない。

 世界の株式市場の休場日は、17日はインドネシアが独立記念日で休場する。1945年、日本の敗戦が公になった2日後に日本の軍人の支援を受け、オランダ軍進駐前の間隙をついて後の大統領スカルノが独立を宣言した。21日はフィリピンが「ニノイ・アキノ・デー」で休場する。1983年に政治家のニノイ・アキノ氏が亡命先のアメリカから帰国する途中にマニラ空港で暗殺され、1986年2月の「エドゥサ革命」の遠因になった日。

 国内の経済指標は何と言っても17日朝の4~6月期GDPに注目。マイナスになるのは堅いとみられているが、在庫など不確実な要素もある。どの程度のマイナスになるかで東京市場の株価への影響度が変わってくる。19日は貿易収支も注目されるが、同じ日の訪日外国人客数、全国百貨店売上高は、上海市場の株価暴落で訪日外国人のインバウンド消費に陰りが出たかどうかを確かめられるという意味で重要。はたして上海市場のバブル崩壊で「爆買い」も退潮しただろうか?

 17日は4~6月期の国内総生産(GDP)速報値、18日は7月の首都圏・近畿圏新規マンション市場動向、19日は7月の貿易収支、6月の全産業活動指数、7月の訪日外国人客数、全国百貨店売上高、日本製半導体製造装置BBレシオ、20日は7月の粗鋼生産量、全国コンビニエンスストア売上高、21日は7月の全国スーパー売上高、食品スーパー売上高が、それぞれ発表される。

 主要銘柄の決算発表は、4~6月期(1~6月期、10~6月期)は東証の推奨期限の15日を過ぎたので、東芝<6502>など「遅刻」の銘柄以外はすでに終了しており閑散。17日はインバウンド関連のドン・キホーテHD<7532>、19日はあいHD<3076>が発表する。

 今週の新規IPOはお休み。次回は来週26日。なお18日上場のスズキ太陽技術<1432>の株式公開先はTOKYO PROマーケットで、ここは特別に許可でも得ていない限り個人投資家は売買に参加できない東証の機関投資家専用市場。個人投資家向けメディアでは新規IPOにカウントしないことが多い。

 海外の経済指標はアメリカの住宅関連指標が多く出る。重要なのは18日の住宅着工件数と20日の中古住宅販売件数。19日のアメリカの消費者物価指数も見逃せない。

 17日はユーロ圏の6月の貿易収支、アメリカの8月のNY連銀製造業景気指数、NAHB住宅市場指数、6月の対米証券投資、18日は中国の7月の主要70都市の新築住宅価格、英国の7月の消費者物価指数(CPI)、アメリカの7月の住宅着工件数、建設許可件数、19日はアメリカの7月の消費者物価指数(CPI)、20日はアメリカの7月の中古住宅販売件数、CB景気先行指標総合指数、8月のフィラデルフィア連銀製造業景況感指数、7月の北米半導体製造装置BBレシオ、21日は中国の8月の財新(以前のHSBC)製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値、ドイツ、フランス、ユーロ圏の8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値、アメリカの8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が、それぞれ発表される。

 18日にインドネシアとトルコで政策金利が発表される。19日には7月28、29日に開催されたFOMCの議事録が公表される。利上げについての議論の詳細がわかる。20日はギリシャにとってECB(欧州中央銀行)への32億ユーロの負債の返済期限。

 アメリカ主要企業の決算は小売セクターの発表が多い。17日にアーバンアウトフィッターズ、エスティローダー、18日にホーム・デポ、TJX、ウォルマート・ストアーズ、19日にロウズ、ターゲット、20日にセールスフォース・ドットコム、ギャップ、ヒューレット・パッカード、21日にディア、フットロッカーが発表する予定。

 前週の東京市場は、中国人民銀行の通貨操作に強く支配された。11~13日に3日連続で人民元の基準値を引き下げ、対ドルレートを3日間で約4.5%の人民元安に誘導した。もし、14日時点で124.5円のドル円レートが3日間で4.5%も円安に振れたとしたら130円を突破するから、「超円安だ」と大騒ぎになるだろう。日本と中国では通貨管理政策が異なるとはいえ、それほどまでに過激な通貨レートの操作をやっていた。

 3日目の13日などは、事前に為替市場に人民元買い・ドル売り介入を行って油断させる「おとり作戦」、孫子の兵法でいう「迂直の計」まで使われて、東京市場はしてやられた。孫子曰く「兵は詭道なり」「兵は詐を以って立つ」。だまし討ちとはいえ、中国四千年の賢者の知恵、おそるべし。

 かくして「8月には、何かが起こる」というアノマリーは、今年もしっかりと維持された。過去、8月にはニクソン・ショック、イラクのクウェート侵攻、ソ連のクーデター、アジア通貨危機、ロシア通貨危機、パリバショック、米国債格下げ、ジャクソンホールでのバーナンキ発言といったマーケットにとっての凶事が何度も起きた。昨年は8月8日、オバマ大統領のイラク北部限定空爆承認で日経平均は454円安で終えている。そして今年は「人民元3日連続切り下げショック」が襲い、アノマリーの「8月の凶事」に加わった。

 だがもう、嵐は去った。中国人民銀行は13日に「打ち止め」を表明している。例年ならば夏枯れの時期で、「鬼門」のSQ週の火曜、水曜に重なるという間の悪さもあったが、そのマイナーSQ日は20540円という高めの水準のSQ値を出して無事通過し、週間騰落は205円安で深い傷を負わずにすんでいる。お盆休みが終わって日本経済が再起動する今週17日から、また出直せばいいこと。