ブータン、他のアジア諸国に比べて過小評価されていないか

2013年01月19日 19:55

  安倍首相が米国の代わりに外遊先として選択したベトナム・タイ・インドネシアのASEAN諸国。その高い経済成長率に加え、対中国政策で共通する課題があるなど、ASEAN諸国の重要性は増し注目度は高まる一方である。こうしたある種派手な動向を見せる国々がある一方で、一定の経済成長を見せながらもなかなか注目を集めないアジアの国も多く存在する。

  ブータンもそうした国の一つであろう。2011年、外交関係樹立25周年にあたり、震災後初の国賓として国王陛下及び王妃陛下が訪日し、大きく話題となったことは記憶に新しいところであろう。このブータンも、2002年から2008年までのGDP平均成長率が9%と高く、2009年も6.7%、2010年は11.8%、2011年も8.5%を記録している。その特徴は、労働力の59.4%が農業に占められていることに加え、ほとんど全ての消費財や資本財をインド及び他国からの輸入に依存しており、さらに、インドからの輸入が7~8割を占めることから、インドの影響を強く受ける点であろう。そのインド経済の成長が頭打ちをしており、先行きが不透明な状況にあることから、その影響が危惧される。

 こうした中、日本はインドに次ぐブータンの主要援助国であるにも関わらず、あまり日本企業のブータンにおける動向は聞こえてこな い。昨年も、8月に日本興亜損保がブータン王立保険公社との間で、同社への技術支援に関する提携に合意したと発表された程度である。文化面でも、九州大法学研究院が、ブータンの仏教寺院などの文化財保護法整備に協力するためにブータン政府や国連教育科学文化機関(ユネスコ)と協定を結んだといった程度ではないだろうか。確かにブータンは、人口が約70.8万人(2011年)と著しい内需拡大が期待出来る国ではない。しかし、失業者全体に占める若年者(15歳から29歳)の割合は65.45%と高く、都市部においては職を求める若年者が増加傾向にあるという。国による無償資金協力や技術協力はなされているものの、未開拓とも言える国であり、一定の労働力も期待出来る国であるだけに、日本企業によるこの国での動向はもっと活発化してもよいのではないだろうか。

  2010年の日本人観光客は、全体の13.4%となる3136人であり、米国に次いで第2位であった。しかし2011年以降、日本人観光客は急増しており、2012年1月~6月の間だけで3587人と外国人観光客数の中で最多となっている。企業レベルでは注目度が低いものの、個人レベルでは関心が高まっていることの表れであろう。またブータンは、国際機関での選挙や議決において日本を支持する支援国でもある。経済的豊かさのみを追い求めるのではなく、国民総幸福量という独自の概念を提唱している国ではあるが、こうした国の経済成長を手助けすることは、企業にとってだけでなく、国益にも繋がるものであろう。真に国益に繋がるのか不透明な国々との関係も必要ではあろうが、ブータンのような国との関係を企業にはもっと重視して欲しいものである。(編集担当:井畑学)