【今週の展望】10月に入って+1050円の勢いで19000円タッチ?

2015年10月12日 20:31

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無残にボロボロにされた東京市場に、上昇のエネルギーがよみがえってきた。夏の終わりからのパラダイムシフトを「プチ」で終わらせることができるか?

 日経平均も、8月26日の17714円、9月8日の17415円、9月29日の16901円と3回のザラ場底値を経験し辛酸をなめたが、前週は25日移動平均線を完全に超えた。16901円の底から2万円までの道のり3099円のおよそ半分まで登ってきたが、2万円への半値戻しを8営業日という、けっこう速いスピードで達成できている。これは、8月下旬から無残にボロボロにされた東京市場に、以前の上昇のエネルギーがよみがえったことを意味する。半値戻しと言っても位置的にはまだ「17000~18000円台ワールド」の内部にあるが、元の「2万円台ワールド」への復帰シナリオがおぼろげながらも見えてきた。夏の終わりからの「プチ・パラダイムシフト」の悪夢を「プチ」で終わらせる準備は、少しずつ整いつつある。

 1週間で713円上昇し、9日時点で上空の19155~19333円に横たわる日足一目均衡表の「雲」まであと717円。今週の雲は、上限は13日の19280円から16日の19181円へ、下限は13日の18839円から16日の18742円へ、上限も下限も徐々に100円ほど位置を下げていく。下限まではあと304~401円なので、8月20~21日以来の「雲タッチ」は射程距離内にとらえている。

 9日時点で、終値18438.67円の下に5日移動平均18218円、25日移動平均17972円がある。上のほうは「雲」のすぐ下に200日移動平均19129円があり、75日移動平均19433円は雲の上。ボリンジャーバンドでは25日線-1σの17586円と+1σの18359円のニュートラルゾーンから79円、上に飛び出した。+2σは18745円、+3σは19132円にある。

 オシレーター系指標では久しぶりに「買われすぎ」シグナルが点灯した。93.0で70を超えたストキャスティクス(9日・Fast /%D)と、+80.4で+50を超えたRCI(順位相関指数)で、5営業日で713円、7営業日で1050円も上昇したピッチの速さがそうさせている。しかし25日移動平均乖離率は+2.5%で買われすぎの判断目安+5%の半分しかなく、騰落レシオは104.7で買われすぎ目安の120はまだ遠い。RSI(相対力指数)は53.1、サイコロジカルラインは8勝4敗で66.7%、ボリュームレシオは63.5である。

 買われすぎシグナルをどう見るか。これは「勢い」への評価の問題だろう。以前の「2万円台ワールド」であれば〃調子に乗って飛ばしすぎ〃でも、「17000~18000円台ワールド」であれば〃猛チャージでナイス・リカバリー〃と評価される。ゴルフにたとえれば、東京市場はロングホールの泥沼のハザードからようやくフェアウェイ脇のラフまで出したところ。この勢いのまま、刻んだりなんかせず一気にグリーンオンしてパーセーブを狙いにいく。それがトッププロのスコアメイク戦略だ。

 それをサポートしてくれるテールウインドはコースに吹いているのだろうか? 需給のデータを確認すると、東証が発表した9月28~10月2日の週の投資主体別株式売買状況は、外国人は1988億円の売り越しで8週連続の日本売り。個人は2週連続の買い越しから440億円の売り越しに転じた。それに対して買い手に回ったのが年金資金がその背景の信託銀行で、2412億円の大幅な買い越しで外国人+個人とほぼイーブン。10月2日時点の裁定買い残は16億円増の2兆723億円。信用倍率は5.95倍で、9月から6倍前後の水準を保ったまま。カラ売り比率は5日の36.9%が6日、7日は38.0%、8日は40.1%まで上昇したが、マイナーSQ日の9日は33.9%に急落した。

 そんな需給データから言えるのは、9月の一時期のように「一方的にやられっぱなし」にはならず、カウンターが繰り出されるようになったこと。下げればすぐ押し目買いが入るなど、歯止めがかかる。つまりリスクが限定される。それは10月の日経平均のチャートを見ればよくわかるだろう。9月のチャートは陽線(白)も陰線(黒)も実体がやたらに長かったが、10月はそれが短くなっている。8月中旬までの「2万円台ワールド」にいた時は、もっと短かった。

 そう、月初から1000円を超える上昇をみせたのも、悪材料に対して打たれ強くなったのも、需給が改善しているのも、チャートパターンも、10月はそれまでの混乱に別れを告げて、「2万円台ワールド」へ帰っていく旅立ちの季節だということを意味している。

 旅立ちだから、後ろは振り返らない。下値は限定される。25日線の17972円も、10月の「まぼろしのSQ」18137円も低すぎる。5日線の18218円か、ボリンジャーバンドの25日線+1σの18359円あたりが適当だろうか。一方、上値は今週、世界的な投資マインドの好転を受けて吹っ切れたように上昇できるだろう。雇用統計も日銀会合もSQも小売大手の決算も、様子見しそうなイベントは全て通過した。25日線+2σの18745円も、降りてくる日足一目均衡表の「雲」も突破するに十分なエネルギーはある。だから8月30日以来の19000円タッチもありうると予測する。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは下値は限定され、上値は大きく伸びて18200~19000円とみる。

 日経平均が7日まで6日続伸した原動力の一つは、「2年ごとのジンクス」を打ち破って日本人のノーベル賞受賞者が2人出たことだった。北里大学名誉教授の大村智氏が医学・生理学賞を、東大宇宙線研究所所長の梶田隆章氏が物理学賞を受賞。どちらもマーケットでは関連銘柄がもてはやされたが、受賞までには長く苦しい雌伏の時を必要とした。だからこそノーベル賞には大きな価値がある。「人間の歴史は、虐げられたものの勝利を忍耐強く待っている」(ラビンドラナート・タゴール/1913年文学賞受賞)(編集担当:寺尾淳)