林幹雄経済産業大臣は原発の再稼働について11日のNHK番組で「安全が何より最優先」としたうえで「世界最高水準の原子力規制委員会の基準に適合すれば再稼働を進めていくというのが政府方針だが、何より、国民や地元の理解を得ることが大事なので、粘り強く、丁寧に説明しながら取り組むことが必要だ」と丁寧に説明していく姿勢を強調した。
林大臣は鹿児島県の九州電力川内原発に続き、愛媛県の四国電力伊方原発の再稼働へ動きが進んでいることについても「関係者の理解を得ることがまず大事だと思っている」と語った。伊方原発3号機の再稼働については今月9日、愛媛県議会で自民党県連など3会派が再稼働は必要などとする決議案を提出、賛成多数で可決している。
また林大臣は、東京電力福島第一原発事故が皮肉にも実証した、原発事故発生の深刻な状況を踏まえ、原発再稼働反対の声が大きい中での『原発再稼働』について、国民の理解をどう得ていくのかでは「原子力規制委員会の規制基準が非常にレベルの高いものであること、これをクリアするのだから安全だという理解をしてもらうこと。電力事情についても理解したいただくことが大事だと思っている」とした。
しかし、政府が常に語る「世界で最も厳しい基準」という、定冠詞のような表現については、これまでにも事実でないとの指摘が相次いでいる。その代表格の菅直人元総理は昨年の政府への質問主意書で「フランスなどヨーロッパの原発設置基準は(1)航空機の意図的衝突に備え格納容器を二重にすること、(2)福島原発事故で起きたメルトダウンした核燃料が圧力容器を突き抜けるメルトスルーに備え、メルトダウンした核燃料を格納容器の外に出さずに冷やせるようにコアキャッチャーを設けることが盛り込まれている。日本の規制基準には(1)、(2)は盛り込まれていない。この点でヨーロッパ基準は日本の規制基準より厳しいことは明らか」と指摘していた。
政府は「原子力機関や諸外国の規制基準を参考にしながら、我が国の自然条件の厳しさ等も勘案し、地震や津波への対策の強化やシビアアクシデント対策の導入を図った上で、世界最高水準の基準となるよう策定したものである」と答弁。
菅元総理は「この答弁では世界で最も厳しい水準という根拠は何一つ示されていない。単に主観的に世界最高水準の基準になるよう策定したと述べているだけで、客観的根拠は何も示されていない」と指摘。
そのうえで「ヨーロッパでは航空機の衝突対策は事業者が満足しなければならない性能水準に含まれている。日本の新規制基準に航空機の衝突対策が含まれているとは聞いていない。つまり、新規制基準はヨーロッパで求められている性能基準には達しておらず、世界最高水準とは言えない」と断言している。
「世界で最高水準の規制基準」の表現が、安全神話にならないよう、原発依存低下への取り組みとともに、規制委員会の「規制基準」は常に検証し、高めていくことが求められている。(編集担当:森高龍二)