好調な車載用半導体市場はメーカーの動きも活発化

2012年06月04日 11:00

 5月の新車販売台数が前年比158.7%と好調な自動車業界。同時に、自動車の電動化も急速に進んでおり、半導体メーカーによる車載用製品の開発も活発化している。

 IRジャパンは、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の回路基板に搭載したDC-DCコンバータ、モーター駆動、バッテリ充電などの高速スイッチング用途に広く利用出来る製品として、耐圧600Vの車載用IGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)のプラットフォームCOOLiRIGBTのデバイス3品種を5月22日に発売。新しい第1世代のCOOLiRIGBTデバイスは、大電流レベルでより高い効率を提供すると同時に、MOSFETと同等の高速のスイッチング速度で動作する、低コストの優れたソリューションを提供する。

 またTDKは、車載向け電源回路用のTDK SMDパワーインダクタCLF7045-Dシリーズを開発し、2012年5月より量産を開始すると発表。この製品は、最も使用条件が厳しいエンジンルーム内の過酷な環境にも耐える-40から+150℃までの広い温度範囲に対応する高信頼性を備えている他、巻線や継線の部分には半自動工法を取り入れ、はんだレス構造を実現。エンジン制御モジュール(ECM)のみならず、ABSやエアバッグ、ヘッドランプなどにも使用可能だという。

 さらにリニアテクノロジーは、65V入力が可能で、3mm×5mmDFNまたは熱特性が改善された16ピンMSOPパッケージに収められた、最大500mAの連続出力電流を供給する同期整流式降圧コンバータ「LTC3630」の販売開始を発表。内蔵の同期整流器によって90%の高効率を達成し、Burst Mode動作によって無負荷時の消費電流をわずか12μAに抑え、バッテリ動作時間を最大限に延ばしているという。入力電圧範囲は4Vから65Vで、車載用だけなく、産業用、医療、航空などの幅広いアプリケーションに適している。

 その他、ゼットエムピーと日本マイクロソフトが、自動車の車載センサー情報の収集、解析、制御のための次世代技術やサービスの研究開発環境を提供すると発表するなど、新製品が開発される為の環境も多様化し、広がっている。

 矢野経済研究所によると2011年の車載用半導体世界市場は、東日本大震災とタイ洪水の影響によりマイナス成長が懸念されたものの、前年比9.9%増と好調を維持。車載用マイコン市場は前年比1.2%増と微増であったが、車載用半導体センサは前年比11.9%増、車載用パワー半導体については前年比28.0%。今後も堅調に推移し、2015年に295億米ドル、2020年には403億米ドルに拡大し、2011年から2020年までの年平均成長率は7.8%と予測されている。日本の半導体企業は、どこまでこの波に乗って成長を遂げられるのであろうか。