かねてから広く世間に認知されており、かつ普及もしていた乳酸菌関連製品。健康志向の高まりもあって、食品やドリンクでも手軽に摂取できる乳酸菌は、流行廃りの激しい健康食品市場の中で、盤石と言える程のポジションにある。近時では、花粉症やアレルギー、ピロリ菌にも効能があるということもあり、その人気が再燃。メーカーによる研究も活発化しているようである。
5月15日にはタカナシ乳業が、米国Vanderbilt大学との共同研究により、プロバイオティクス乳酸菌であるLGG菌(ラクトバチルスGG株)の腸管上皮の保護作用について確認したと発表。腸の表面を構成する腸管上皮細胞は、栄養素の吸収だけでなく、病原菌や有害な異物の侵入を物理的に防ぐバリア機能や免疫を活性化させるための情報伝達機能など様々な役割を担っている。腸管上皮細胞の機能が損なわれると、病原菌の感染やアレルギー物質の体内への侵入が容易になり、また免疫機能がうまく働かず、結果として健康に様々な影響を及ぼすという。LGG菌はこの腸管上皮細胞の成長を促進し、ダメージから保護していると推測されるという。
また、4月にはサッポロが、乳酸菌「SBL88乳酸菌」に肝機能改善効果(脂肪肝の抑制)があることを、アルコール性肝障害モデルマウスの試験において世界で初めて発見したと発表。ヒト試験においても、「SBL88乳酸菌」を摂取しないグループに対し摂取したグループは、血清中の中性脂肪が低下することが分かったとのこと。今回の試験結果から、乳酸菌の継続的な摂取により、アルコール飲酒によりダメージを受けた肝機能の改善やアルコール性肝障害を緩和する効果についても期待できる。
さらに、3月にはカルピスが、味の素との共同研究により、乳酸菌発酵後に酵母発酵を加えると発酵乳の嗜好性が向上し、その要因として発酵から生まれた「香り」が重要であることを、ラットを用いた動物実験にて確認したと発表している。
その他、ヤクルトが「中央研究所」に最新鋭設備・研究機器を備えた研究棟を新設すると発表するなど、グローバルな競争に打ち勝つための研究開発および、その為の施策が加速している。乳酸菌市場は、安定成長が見込める市場である一方、研究開発技術を構築するまでに費用と時間を要することから、容易に参入出来ない市場でもある。研究開発が進むと同時に、アサヒがカルピスを買収したように、業界の再編という形での動きも活発化していくのではないだろうか。