アベノミクスによる日本不動産市場への影響とは

2015年12月05日 20:04

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総合不動産サービス大手のJLLは、アベノミクスの成果についての評価と、各政策が不動産市場に及ぼした影響と今後の見通しを検証したレポート「アベノミクス後の日本不動産市場の検証-いまだ勝機あり」を発表した

 2012年末にスタートしたアベノミクスによる大胆な金融政策は、日本経済に円安、低金利をもたらし、その結果、不動産市場は活発化、不動産投資額は大幅に増加した。オフィス賃料も2012年以降上昇を続けており、2015年通年では世界的にトップクラスの賃料上昇が予測される魅力的な市場となった。

 これを受け、総合不動産サービス大手のJLLは、アベノミクスの成果についての評価と、各政策が不動産市場に及ぼした影響と今後の見通しを検証したレポート「アベノミクス後の日本不動産市場の検証-いまだ勝機あり」を発表した。

 それによると、不動産取引額は、2012年以降活発化し、2013年初頭の金融緩和策以来急速に増加。商業用不動産投資額は2014年に4兆7,000億円と、2012年と比較して倍以上に増加した。海外投資家による日本不動産への投資は、良好な借入れ条件、他のグローバル市場に比べて魅力的なスプレッド、それを支える為替ヘッジ環境などを背景に目覚ましい回復をみせ、2014年の海外投資家による投資額は2011年比で14倍にも達したという。

 日本の投資額全体における海外投資家割合は、過去5年間で5%-10%台であったが、2015年1月-9月間では22%にも及んでいる。2015年1月-9月の海外投資家による投資額は日本円ベースですでに2012年、2013年の通年額を上回っており、非常に堅調であるとしている。

 しかし、国内投資家(REIT、私募REIT、国内不動産会社やデベロッパー、私募ファンドなど)が市場を独占しており、海外投資家にとって参入し難い市場でもあるという。不動産価格は国内の全ての不動産セクターにおいて堅調に上昇。東京のオフィス価格は、2012年末から2015年第3四半期までの期間に、Aグレードで41%、Bグレードで59%上昇した。

 一方、賃貸市場は、前回の市場ボトムである2012年以降改善し続けている。東京Aグレードオフィス賃料は、14%上昇(2012年末比)しており、Bグレードオフィスの賃料も同様の成長を見せたとしている。

 また、2015年第3四半期において価格上昇は若干鈍化したという。これは短期的な投資家の警戒や潜在的に穏やかな経済成長率に起因するとも考えられる。しかし、金利の大幅上昇やリーマンショックのような外部要因なくして、短期的に不動産価格が下落するようなことはないであろうとしている。

 企業収益増大による設備投資額の拡大は、今後の企業成長の可能性を示唆している。したがって、Aグレードオフィスの賃料は、今後2~3年にわたっては引き続き緩やかな賃料成長が続くと予測している。

 長期的には、政府による十分かつ適切なペースで構造改革の実施が重要であり、アベノミクス効果に期待を寄せる投資家に投資機会があると考えられる。また、経済や価格上昇にとらわれず、資産管理によって資産価値向上の可能性を見出す専門分野の投資家にとっても長期的な機会があると考えられるとした。

 セクター別には、日本の人口構成の変化を背景に高齢者用施設、地方のショッピングセンター、インターネット通販の拡大に支えられるロジスティックス、2020年の東京オリンピックおよび観光立国日本を見据えたホテルセクター等は、今後とも優れた投資利益をもたらすと考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)