安倍晋三総理は「経済の好循環ができるかどうかは『設備投資』と『賃上げ』にかかっている」と未来投資に向けた官民会議などで強調し、そのため、バックアップを全面的に行う姿勢を加速させている。最たるものが法人税実効税率の引き下げ姿勢にみえる。
現行32.11%の税率を2017年度に20%台にする予定だった計画を1年前倒しし、来年度に20%台に引き下げる検討を関係省に指示した。
2.12%以上の引き下げを行うことになる。企業の税負担軽減で設備投資が増え、正規雇用が拡大し、賃金アップにつながるのか。企業の内部留保が増えるだけにならないか。
安倍総理と政府の経済財政諮問会議民間議員で日本経済団体連合会の榊原定征会長との、いわば「二人三脚」のような経済政策・経済運営・官民連携が総理の期待通りに法人税の軽減分を来年の賃上げに産業界全体で広がりをみせる実効性をあげるのか、蓋を開けてみないと全く分からないのが現実だ。
榊原会長は「年収ベースでの賃金引上げと総合的な処遇改善について、自社の実情に適った形での方策を検討するよう呼びかける」などと安倍総理の意向にはそう姿勢を示している。
安倍総理は低所得年金者に3万円程度を給付する方針で、今年度補正予算に組み込む意向という。個人消費を喚起するには中低所得者層の所得アップが最も即効性がある。貯蓄より消費に回る確率が高い。一時支援に低所得年金者に3万円程度を給付するのも悪くはない。ただ、これは一時的なもので、法人実効税率引き下げというような継続優遇性のものとは質が異なる。
民主党の岡田克也代表は法人実効税率の引き下げ効果には懐疑的だ。設備投資については「一律に法人税率を引き下げるのではなく、投資減税や研究開発減税をしっかりとやる」方が実効性を確認しながら企業支援が確実にできることにつながる。
賃金引き上げについても、現実に引き上げを行った企業、事業所に対しての支援を行う方が、法人税減税のただ乗りを抑制することができる。
日本共産党の志位和夫委員長は今月3日のツイッターで「アベノミクスは2014年度どうなったか。GDPはマイナス0.9%。大企業の経常利益は史上最高の37兆4000億円。これは戦後初めて」としたうえで「経済がマイナスの年は戦後7回あるが、その時は大企業の利益も減っていた。『大企業が儲かれば家計に回る』の破たんを認め、転換を」と安倍政権の政策が大企業を潤してはいるが、庶民の家計に還元されているとはいえないと政策転換を主張する。
同じことにならないのか。同じ指摘が来年の春にされることのないよう、法人税の軽減効果を賃上げや雇用拡大に具現できていることを期待したい。特に、若者の正規雇用が広がっていることが社会の中間層を厚くするうえで重視しなければならない。(編集担当:森高龍二)