巨大化を続けるIoT市場が抱える極めてアナログな課題

2015年12月12日 19:33

ローム

急速に普及を続けるIoT市場。電池寿命の延命やメンテナンスの簡略化が求められる中、ラピスセミコンダクタは業界最少クラスの動作電圧(1.6V)で、機器のタフ&ECO化に貢献するタフマイコン「ML620130ファミリ」を発表した。

 ここ数年で急速な普及を遂げているIoT(Internet of Things)。IT専門調査会社 IDC JAPAN 株式会社が発表した国内IoT市場予測によると、2014年の国内IoT市場におけるIoTデバイスの普及台数は5億5,700万台、売上規模は9兆3,645億円。これが5年後の2019年には、普及台数9億5,600万台、売上規模は16兆4,221億円にまで跳ね上がると予測している。

 もちろん、このIoTの勢いは日本国内だけのものではなく、世界的なものだ。とくに欧米では、主要幹線道路を走行するすべての自動車や公共交通機関、自転車や歩行者の流れをセンサで「見える化」して制御し、IoT を活用して社会インフラを改善しようという動きが始まっており、社会経済におけるIoTの重要性は益々大きくなりそうだ。

 IoT市場が加速する中で、常に課題となるのが、メンテナンスや消費電力、電池交換など、実にアナログ的な問題だ。IoTが発展すればするほど、社会のありとあらゆる所にセンサが存在することになる。無線通信技術はさることながら、すぐに電池切れしたり、頻繁に不具合を起こしたりするようでは、何のためのネットワークかわからなくなる。また、IoT普及による消費電力の増大は、今後の社会問題となることは間違いなく、低消費電力製品の開発は、メーカー各社の存続にも影響しかねない。

 このような状況の中、今年4月には、三重富士通セミコンダクター株式会社が米国のSuVolta, Inc.が保有する、同世代で世界一とも評価される超低消費電力プロセスを実現する技術、Deeply Depleted Channel(TM)(DDC)トランジスタからなるPowerShrink(TM)低消費電力CMOS技術に関する知的財産権を取得している。

 また、ローム<6963>のグループ会社であるラピスセミコンダクタも11月、電池を用いた小型家電や産業機器の電池寿命を延長し、電池消費も削減できる、タフマイコン「ML620130ファミリ」を発表している。同製品は16bitローパワーマイコンで、動作電圧がニッケル水素充電池の電圧倍数(0.8V×2=1.6V)に最適化されたことで、ニッケル水素充電池の能力を余すことなく使用でき、電池を無駄にしない、タフ&ECO化に貢献する製品として注目を集めている。

 IoTの普及によって、急速につながり始めた世界。いずれは、モノだけでなく、すべての人間、モノ、情報が繋がるIoE(Internet of Everything)の世界の到来も予測されている。しかし、つながればつながるほど、どこかに不具合が起きた場合、それがネットワーク全体の致命傷にもなりかねないということだ。それを未然に防ぐ技術があってこそのIoT・IoEであることを忘れてはならない。(編集担当:藤原伊織)