15年7~9月期のICT経済は前年同期比2.2%増と4Q連続でプラスに

2015年12月05日 19:32

 情報通信総合研究所は、情報通信(ICT)経済概況について2015年7~9月期の報告を行った。

 それによると、2015年7~9月期のICT経済は前年同期比2.2%増と4四半期連続でプラスとなった。しかし、この前年同期比の動きには、前年に消費税率引き上げ直後の落ち込みがあった影響が含まれているという。そこで、前期比(季節調整値)の動きを確認すると1.4%減と4四半期ぶりに減少に転じた。ICT経済は15年1~3月期から前期比ベースで減速基調が続いているが、ICT財生産は主に中国向け部材需要の低迷、ICTサービスは情報サービス業の減速が背景にあるとしている。

 月次ベースでみると9月以降反転の兆しがあるという。供給面ではICT財生産が、需要面ではICT設備投資(機械受注)の他、ICT輸出が一部で増加に転じている。新型iPhoneを中心とするスマートフォン向け生産の本格化等が背景にあると推察されるとしている。

 ICT設備投資(民需)は5四半期ぶりに減少した。前期マイナスとなった通信機が持ち直しプラスの寄与となったが、電子計算機が5四半期ぶり、半導体製造装置が4四半期ぶりにマイナスを記録した。電子計算機は、業界動向としては金融業、情報サービス業向けは調子がよく、好調を維持しているとされているが、今期はマイナスに落ち込んだ。半導体製造装置は中国経済の低迷により半導体が供給過剰となっている半導体メーカーが設備投資を絞ってきているためとみられているとした。

 ICT消費は減少から増加に転じた。4Kテレビが牽引役となり、テレビが増加に転じたことが背景にある。ICT消費を牽引してきた移動電話使用料は引き続き減少しているが、通信事業者の収入面では落ち着いてきており、徐々に下げ止まってくると考えられるとしている。

 ICT輸出入は金額ベースでは3四半期ぶりに増加に転じたが、為替要因を除いた数量ベースではICT輸出入ともに減少が継続している。ICT輸入は通信機のみが数量ベースで増加に転じた。背景には新型iPhoneの発売があるという。

 今期ICT経済は、総合、財、サービスの3指標が前期比で4四半期ぶりに減少に転じたが、月次ベースでは一部9月より増加に反転しており、来期プラスに転じることができるのか注目されるとしている。

 また、ICT財生産については、今後も、海外、主に中国向けスマートフォン需要の伸びの鈍化が部材需要にもたらす影響が懸念されるという。ただし、スマートフォンやタブレット端末の薄型化、高速化など高機能化に対応した部材需要は堅調であると言われており、この部分を強みとする日本メーカーの輸出は底堅く推移し、中国経済減速のICT財生産への影響は軽微に留まることが期待される。加えて耐久消費財のICT化が進んでおり、例えば自動車1台あたりの搭載電子部品数は増加するなど、耐久消費財向けの需要が拡大している。中長期的には、IoT、ビッグデータビジネスの立ち上がりを背景にした産業用機器、社会インフラ、医療機器向け等の電子部品需要の拡大も期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)