2011年以降、全国的に省エネや節電への取り組みが進められている。現在でもその取り組みは継続しており、電力消費量の多い需要家は施設規模に関わらず、少しでも安価で環境性の高い電力を求めている。また、国や自治体も電力使用量の抑制とその改善を進めるための法改正などを行っており、需要家は今後もさらなる省エネ対策が必要になると想定される。そうした中、2016年4月に電力小売全面自由化、2017年4月にガス小売全面自由化が予定されており、エネルギー市場は大きな転換期を迎えることとなる。
これを受け、富士経済は、7分野47の業務施設におけるエネルギー消費特性を明らかにし、電力・ガス小売全面自由化で新規事業者への切り替えが進むとみられる施設やポテンシャルを分析した。
それによると、今回対象とした7分野47の業務施設の総エネルギー消費量は、節電や省エネが進むことで減少していくと予想されるものの、医療・福祉施設では増加するとみられるという。福祉施設を中心とした施設数の増加や、エネルギー消費量の多い病院での高度な医療機器の導入や、システム化による電力消費量のさらなる増加などが要因として挙げられるとしている。
また、CO2削減の観点から、各施設においてエネルギー消費効率のよい機器(高効率機器)の導入が必要になるとみられる。医療・福祉施設はエネルギー消費量の増加が予想される上、既存施設数も多く安定した更新需要が期待できることから、高効率機器の導入先として有望だという。
電力小売全面自由化がスタートし、低圧需要家向けの販売が開始されるが、参入各社にとっては、電源確保や販路開拓、人的投資などの課題が残る。そのため完全自由化後もしばらくは既に自由化されている高圧/特別高圧需要家の開拓が中心となり、オフィスビルなどの事務所関連施設、大型物販施設、小学校・中学校、高等学校などの文教施設での切り替えによる市場拡大が予想されるとしている。
なお、低圧市場は、既存事業とのシナジー効果を生かした電力事業を展開できるガス会社や石油会社、商社、通信事業者などが中心になるとみられる。主に、物販・物流施設や飲食施設での切り替えが進み、2020年には新電力市場の1割を占めるとみられる。また、ガス小売全面自由化により、電力とガスのセット売りが本格化し、低圧需要家の中でも厨房や給湯などのガス使用量の多い居酒屋やうどん・そば店など飲食施設での切り替えが期待されるとしている。
2014年では、文教施設と事務所関連施設がそれぞれ30%近くを占めた。2020年には低圧需要家の切り替えも進み、物販・物流施設、飲食施設の構成比が上がるとみられる。一方、高圧/特別高圧が中心の文教施設、事務所関連施設の構成比は下がるとみられる。
なお、エネルギー消費量の多い、もしくは季節ごと、一日のエネルギー消費量の変動が大きい施設、ストック数の多い、もしくはチェーン化率の高い施設などが新電力への切り替えが進みやすいとみられる。例えば物販・物流施設ではコンビニエンスストア、弁当・惣菜店、ドラッグストア、食品スーパーが、飲食施設では居酒屋、ラーメン店、うどん・そば店、焼肉店が、サービス施設ではクリーニング店、理・美容院が、事務所関連施設ではオフィスビル、銀行、郵便局などが挙げられるとしている。(編集担当:慶尾六郎)