マツダの4気筒ガソリンターボ「SKYACTIV-G 2.5T」の発表は“正しい”判断か?

2015年12月30日 20:42

Mazda RightsizeEngine

マツダは11月17日、ロサンゼルスオートショー(Los Angeles Auto Show)のプレスデーで新型ミッドサイズクロスオーバーSUV「マツダ CX-9」を世界初公開した。この新型SUVはに搭載するのが新しく正しい排気量の4気筒ターボ

 マツダは2015年12月8日、LAモーターショーのリリースを公開。北米で来春発売する新型クロスオーバーSUV「CX-9」に搭載する排気量2.5リッターの4気筒ガソリンターボエンジンを開発したと発表した。従来搭載していた3.7リッターV型6気筒ガソリンエンジンから、“ダウンサイズ”したエンジンに換装する恰好だ。かねてよりマツダは、ダウンサイズエンジンに懐疑的な考え方を打ち出していたが、なぜ今回、ダウンサイジングエンジン開発を進め、ワールドプレミアに踏み切ったのだろう。

 マツダはこれまで、排気量を減らして機械損失を抑え、出力低下分をターボなどの過給器で補うガソリンエンジンのダウンサイズについて、「モード燃費に優れるが、実用燃費が悪い」として、消極的な姿勢を示していた。過給すると燃焼圧力が高くなり圧縮後の温度が上昇し、ノッキングが発生しやすくなる。このため圧縮比を下げねばならないからだ。また、欧州製ダウンサイズエンジンは、ノッキングを抑えるためハイオクガソリンが必要とされる。

 圧縮比が下げたエンジンは、走行中の全域でエンジンの熱効率が低い。エンジンの排気量を下げると、軽負荷域運転域において、圧縮比低下に伴う熱効率悪化分を機械損失の低減分が上回る。モード燃費試験は、軽負荷域で走る比率が高い。このためダウンサイジングエンジンは、モード燃費性能を稼ぎやすいというのだ。

 しかし、機械損失の寄与率が低い高負荷運転域では燃費性能は悪くなる傾向がある。圧縮比が下がることによる効率低下分を機械損失の低減分だけで補えないのだ。実際にクルマを走らせる場合、下り坂などの軽負荷域走行も加速時や高速運転など高負荷域の両方が必要。ここにダウンサイジングエンジンの「実燃費性能が悪い」とマツダが考える最大の理由がある。

 多くの弱点を抱えるとマツダが主張してきたダウンサイズエンジン。にもかかわらず今回マツダが発表したエンジンでは、これらの課題を解決するメドが立ったからだ。

 マツダが独自に開発した過給技術「ダイナミック・プレッシャー・ターボ」は、排ガスの掃気効果を高め、1.5程度の圧縮比低下に抑えた。この過給方式は、排気を太い流路と細い流路に分割し太い流路に弁を設ける。低速域で同弁を閉じて細い排気管の排ガス流速を高めてタービンを回す。このとき、排ガスを送る気筒とは別の気筒が「負圧になる現象を利用する」というのだ。この負圧で筒内残留ガスを速く吸い出し、掃気効果を上げる。筒内残留ガスが減ると筒内温度が下がり、ノッキングを抑えられる。なお高速域では弁を開き、通常のターボとなり、高トルクを生み出すというわけだ。つまり、キーテクノロジーは新開発した2経路の排気による過給技術と、これまで自然吸気「SKYACTIV-Gエンジン」で培ってきたクールドEGR(排ガス再循環)だ。クールドEGRについては、冷やした排ガスを吸気側に戻すこと燃焼前の筒内温度を下げて、対ノッキング性を高め。ポンピング損失も減らせる。

 この新技術によって、マツダは「CX-9」に“ダウンサイズ”した4気筒エンジンを搭載する。気筒数が減ったことで機械損失を下げられ、加えてV6型から直4にすることで、吸排気弁や点火プラグなどの部品点数が減らせる。つまり、コストもエンジンそのものの大きさ重量も抑えられる。

 ただ、マツダは、この新型エンジンの発表に当たって「ダウンサイズ」という言葉は使っていない。もしかしたら“正しい排気量”という意味で「ライトサイズエンジン」とでも呼ぶのだろうか?(編集担当:吉田恒)