スマートフォン(多機能携帯電話)は持っているが、パソコンは持っていない。今、こうした人が珍しくなくなっている。スマートフォンの急速な普及にともない、パソコンがなくても不便を感じない人や、ユーザーのパソコン買い替え期間が長期化していることなどが要因として挙げられる。しかし、これは国内だけに限った傾向ではない。全世界的にも、今やパソコンはスマートフォンに取って代わられようとしている。
12日、米調査会社のIDCは2015年の全世界のパソコン出荷台数(速報値)を発表した。それによれば、前年比10.4%減の2億7621万台であり、13年の同9.8%減を上回り、過去最大の減少率となった。また、年間の出荷台数が3億台を下回ったのは、08年以来のこととなる。
IDCによれば、パソコン市場は買い替え期間の長期化、スマートフォンやタブレット端末の大型化により、これまでパソコンが担っていた役割をそれらに取って代わられつつあるなどの課題に直面しており、さらに去年は物価の下落や各国の通貨安、EMEA(欧州、中東、アフリカ)などでの社会混乱などの影響もあった。その結果、第4・四半期(15年10~12月期)の出荷台数は前年同期比10.6%減の7190万台と、前の四半期よりも若干持ち直したものの前年同期比では過去最大の落ち込み、そして15年通年でも過去最大のマイナス幅に陥ったとの見方を示している。
15年の世界出荷台数のトップ5を見てみると、1位がLenovo(レノボ)で前年比3.6%減の5718万台、2位がHP(ヒューレット・パッカード)で同5.9%減の5353万台、3位がDell(デル)で同5.9%減の3904万台、4位がApple(アップル)で同6.2%増の2079万台、5位がAcer(エイサー)グループで同18.1%減の1968万台と、アップル以外軒並み前年を下回っている。トップ5の市場シェアは、Lenovoが20.7%、HPが19.4%、Dellが14.1%、Appleが7.5%、Acerグループが7.1%で、その他が31.1%となっている。
昨年、米マイクロソフトは最新基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」の提供を開始したが、「ウィンドウズ7」以降のバージョンからは無料更新することができるため、パソコンの買い替えにはつながらなかった。さらにパソコンの品質向上によりクラッシュする率が少なくなっていることや、主要市場である中国経済の減速などの要因も、出荷台数の低迷に結びついていると思われる。(編集担当:滝川幸平)