【総合流通、コンビニの3~11月期決算】赤字続出のGMSの事業立て直し、コンビニの客単価アップが大きなテーマ

2016年01月17日 16:33

 ■来期、GMSの事業立て直しが本格化する

 小売業の総合流通、コンビニ業界主要各社の3~11月期(第3四半期)決算が出揃った。

 総合流通グループは、セブン&アイHD<3382>はトータルの連結決算では営業収益0.3%増、営業利益4.6%増。営業利益は3年連続過去最高でも、純利益は1.5%減で最終減益だった。イトーヨーカ堂、ヨークマート、ヨークベニマルなどスーパーストア事業分野(GMSなど)は営業収益は2.5%増だが、営業利益は95.3%減と深刻で、赤字転落寸前の有り様。イトーヨーカ堂単独では赤字だった。

 イオン<8267>はトータルの連結決算では営業収益18.9%増、営業利益は63.8%増で大幅増益だが、当期純損益は前年同期の293億円の黒字から174億円の赤字に転落した。その元凶はイオンリテール、イオン北海道、イオン九州、ダイエーが属するGMS分野で、営業収益は4.4%増だが、営業損益は258億円の赤字で前年同期の152億円よりも赤字幅が拡大した。営業増益もマルエツなどを統合したユナイテッド・スーパーマーケットHD<3222>が連結子会社になった一時的な要因である。

 ユニーGHD<8270>は、トータルの連結決算は営業収益2.0%増、営業利益4.8%増、純利益は75.5%減。アピタなど総合小売業(GMS)は営業収益3.3%増、営業利益11.6%減だった。

 セブン&アイもイオンもユニーも、GMSは利益を出せない業態と化し、事業再編は避けられない。セブン&アイは昨年10月に「事業構造改革」を発表し、イトーヨーカ堂の40店舗閉鎖を発表した。亀井淳顧問が1月8日にイトーヨーカ堂社長に再登板し、イオン、ユニーともども来期はGMSの事業立て直しが本格化する。

 セブン&アイHDのコンビニエンスストア事業(国内外のセブンイレブン)の営業収益は1.7%減とマイナスだったが、営業利益は12.4%増で2ケタ増。セブンイレブン・ジャパン単独の3~11月期の既存店売上高の伸び率は前年同期の2.4%を上回る3.2%で、既存店で利益を出せる体質づくりに成功している。

 ローソン<2651>は成城石井、ユナイテッド・シネマを連結対象に加えて営業総収入が前年同期比20.2%増と大きく伸び、営業利益は3.8%増だったが純利益は4.5%減。

 2016年9月にユニーGHDと経営統合するファミリーマート<8028>は、営業総収入15.3%増、営業利益25.0%増だが、純利益は25.6%減。経営統合でユニー傘下のサークルKサンクスの店舗ブランドは「ファミリーマート」に統合される。その相手のユニーGHDのコンビニエンスストア事業は営業収益1.2%増、営業利益8.3%減だった。

 ■コンビニは出店競争の次は客単価アップ競争

 総合流通グループのセブン&アイHDの2016年2月期の通期業績見通しは、営業収益は1.8%増、営業利益は6.9%増に上方修正。前期は減益だった当期純利益は5.8%増。スーパーストア事業は営業収益2.4%増、営業利益は6.5%増。34.8%の大幅減益だった前期実績を少し上回るにとどまる。

 イオンの通期業績見通しは売上高13.0%増、営業利益23.8%増、当期純利益1.0%増。GMS分野の営業赤字幅拡大はほぼ確実だが、3期連続の営業減益のトンネルからは抜け出せる見通し。しかし最終利益が減益になる可能性は残っている。

 ユニーGHDは通期業績見通しに修正はなく、営業収益は1.5%増、営業利益は3.8%増、当期純損益は前期の赤字から黒字化して15億円。総合小売業(GMS)は営業収益2.5%増、営業利益2.3%減。コンビニエンスストア事業の営業収益は1.7%増だが営業利益は14.6%減の見込み。

 コンビニのセブンイレブン(セブン&アイHDのコンビニエンスストア事業)は、営業収益は1.4%増、営業利益は9.1%増。

 ローソンは営業総収入16.3%増、営業利益0.7%増、当期純利益7.7%増で修正なし。ユナイテッド・シネマを連結対象に加えた効果、独自開発の「グリーンスムージー」などPB商品も貢献して2ケタ増収で、前期の大幅最終減益から反転する見通し。神奈川県が地盤のスリーエフと資本提携を締結するが、保有比率は5%程度で持分法適用の20%以下。

 ファミリーマートの通期見通しは修正なし。営業総収入は10.0%増、営業利益は16.0%増の2ケタ増収増益だが、当期純利益は18.2%減を見込む。サークルKサンクス全店を加えると国内店舗数は約1万7600店で約1万8000店のセブンイレブンとほぼ肩を並べ、約1万2000店のローソンを引き離す。

 コンビニエンスストア全社の店舗売上高は昨年11月まで33ヵ月連続増収。それから開店後12ヵ月未満の新店分を除いた既存店売上高も昨年4月から8ヵ月連続のプラスになっている(日本フランチャイズチェーン協会「JFAコンビニエンスストア統計調査月報」)。客単価が昨年4月から8ヵ月連続で全店、既存店ともプラスになっており、一時期の出店競争が一段落した現在、伸びない客数をPBなど新商品の投入で補う客単価アップが、各社の戦略の中心になっている。(編集担当:寺尾淳)