2015年のコンビニ業界を振り返ると、各社ともこれまでの小売業のみにとどまらず、様々な業種とのコラボを本格的に始めた年であると言えよう。DVD、CDのレンタルの併設や喫茶ルームの開設、介護ビジネスや果ては電力の小売業にまでその触手を伸ばしている。
もっとも多様な業種に進出しているのはファミリーマートだった。まず、同社では11月に全国に TSUTAYA を展開するTSUTAYAと提携し、大阪府枚方市に両社の一体型店舗を出店するなど新業態の展開を進めた。
そして、ファミリーマートは、要介護者の見守りについても、各自治体との連携を進めている。同社は7月に、茨城県那珂郡東海村と、同村で展開するファミリーマート4店舗において、「要援護者の見守り活動に関する協定」を締結した。これは、要援護者 (一人暮らしの高齢者や障がい者、子どもなど)を対象に、各店での日ごろの店舗運営を通じて、何らかの異変を察知した場合、東海村地域包括支援センターに連絡をし、連携を図っていくというもの。地域に密着した“社会・生活インフラ”の拠点としての店舗運営を目指す。また、12月には静岡県と同様の協定を締結している。
また、同社はドラッグストアとのコラボも進めている。同社は8月に湘南薬品と提携し、は、ファミリーマートと湘南薬品の一体型店舗として、「ファミリーマート+湘南薬品戸塚西口店」をオープンした。店舗の入口付近に一般用医薬品のコーナーを配置し、約200種類の一般用医薬品を販売している。
一方、ローソンは三菱商事と提携し、2016年4月の電力小売の全面自由化に向け、共同で家庭向け電力小売事業に参入することを15年12月時点で決定した。これにより、両社の共同事業会社「MCリテールエナジー株式会社(仮)」が、経済産業省資源エネルギー庁に小売電気事業者の登録申請を実施している。
これがコンビニ業態とどう関係するかというと、まず、関東圏に約4,000店舗を有するローソンの店頭やネットワークなどを通じて、サービスの告知を行っていく。また、独自の料金プランや電気使用料に応じてPontaポイントが貯まる特典などを検討しているという。
そして、業界最大手のセブン‐イレブンを展開するセブンセブン‐イレブン・ジャパンは東京都の品川区や静岡県、兵庫県、高知県などと連携・協力して、地域の高齢者などの見守り活動を行なうと発表している。これは、店舗営業時や配達サービスの中で、高齢者および児童、障害者などの見守り活動を実施し、異変を察知した際はそれぞれの各自治体および各関係機関と連携し対応するというもの。これについては、前述したようにファミリーマートも同様の活動を行っているが、現在のところこのような取り組みはセブン‐イレブンのほうが活発に行っているようだ。
また、同社は日本各地の地方創生施策とのコラボも積極的に展開し始めた。各地の特産商品を活かしたフード商品の限定販売など(北海道、北陸、関西など)も展開し始めている。
さらに、10月には初となる中東への出店を行った。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国でセブン‐イレブン1号店を開店した。将来的なフランチャイズ展開も視野に入れ、セブン‐イレブン事業を展開していく方針だ。開業当初は、7 つの首長国のうちドバイ首長国にて高密度集中出店を行い、その後アブダビ首長国等、他地域への展開を行っていく予定だという。
このように、2015年のコンビニ業界は各社とも、様々な業種とのコラボや海外進出などによる新業態を模索し始めた年と言える。(編集担当:慶尾六郎)