奨学金の返済に苦しむ若者が増加、滞納者は「ブラックリスト」化も

2013年01月27日 16:10

 学生時代に受給した奨学金の返済に苦労する社会人が増えている。進学率の増加や世帯収入の減少などにより、大学生の約5割が奨学金を受給しているが 、就職難や所得の減少で返済に苦しむケースが相次ぐ。

 日本学生支援機構によると、同機構の奨学金を利用する学生の数は133万9千人(2012年)。10年前1.5倍になった。

 利用が増えているのは主に、利子付きの奨学金。無利子の奨学金と比べて、成績や所得の要件が比較的緩いことから利用者が急増している。無利子の奨学金の利用者数は10年前からほとんど増えていないが、有利子の利用者数はこの10年で2倍以上に増加した。

 奨学金の利用拡大と同時に、滞納者も増えている。日本学生支援機構への返済を滞納している人は、2012年3月末で約33万人に達した。

 こうした状況を受け、同機構は2010年から滞納金の回収を強化。長期間の延滞が続く若者には、返還を求めて裁判所に督促を申し立てる。督促件数は2006年度の1181件から、10年度は7390件と約6倍になった。滞納者の個人信用情報機関への登録は昨年1万件を超え、滞納者の「ブラックリスト化」が進む。

 若者の雇用状況は厳しく、奨学金を滞納している人の7割が年収200万円未満。延滞が継続している理由は「本人の低所得」が最も多く47.8%、次いで「親の経済困難」37.8%、「延滞金額の増加」27.8%となっている 。経済的に困窮する中、親からの金銭的な援助を受けられない若者たちが、返済に苦しむ様子が浮かび上がる。延滞すれば年10%の割合で延滞金が課され 、ますます返済が難しくなる。

 日本学生支援機構は今後も、督促を強化し回収率の向上に努める方針だという。だが奨学金の回収率を上げるだけでは、奨学金制度が抱える根本的な問題は解決できないだろう。教育への公費支出を増やし、貸与型ではなく返済の必要がない給付型の奨学金を増やすなどの施策がなければ、若者が卒業と同時に何百万円もの借金を背負ってしまうような状況は変わらない。

 この3月には、全国各地の法律家や学者らでつくる「奨学金問題対策全国会議」(仮称)が設立される予定。返済が困難な人の救済だけでなく、奨学金制度の抜本的な改善を求めていくという。問題解決への試金石となることを期待したい。