有機材料による偽造できないセキュリティータグとは 産総研が開発

2016年02月01日 08:58

 高性能な家電製品や高級ブランド品、ソフトウエアなど、高価で品質の高いものが出回る現在の社会では、近年模倣品が大きな問題となっている。特許庁の「2014年度 模倣被害調査報告書」によれば、2013年度の模倣品による国内総被害額は1,100億円にも上っているという。さらに同報告書の企業アンケートによれば、40%以上の企業が国外市場での被害が年々増加していると回答している。模倣品は経済損失やブランド力の低下だけではなく、事故や事件の原因になるなど安全な社会・安心できる生活を脅かす危険性がある。既に一部の製品では、個々の製品に固有の番号を付加して、トレーサービリティーを向上させ真贋判定にも役立てている。

 しかし、バーコードやQRコードなどの印刷された情報や、集積回路に電気的に記録された情報は複製が可能であるため、偽造品や海賊版が正規品として流通してしまう危険性が常にあった。そこで今後は、偽造困難なIDタグなどを利用した、真贋を区別できる製品の需要が高まることが予想される。
 
 これを受け、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 フレキシブルエレクトロニクス研究センター 印刷デバイスチーム 吉田学研究チーム長、栗原一徳 研究員、ナノエレクトロニクス研究部門 エレクトロインフォマティクスグループ 堀洋平主任研究員、小笠原泰弘研究員、片下敏宏主任研究員は、有機デバイスに特有のばらつきを利用して偽造を困難にするセキュリティータグ回路を開発した。

 この回路は、作製時に有機デバイスに生じるわずかな素子間のばらつきを利用して、同じ設計の回路それぞれが異なった固有の番号を生成する。今回、大気中での安定性が高い有機半導体と、有機材料と無機材料を用いたハイブリット絶縁膜を用いて、わずか2 Vで動作するエラー率の低い回路を開発した。この回路はフレキシブル基板上に作成でき、商品パッケージなどにIDタグとして張り付けることで偽造品などの流通防止や回路自体の改ざん困難性(耐タンパー性能)の向上への貢献が期待されるとしている。

 今後はデバイス作製プロセスに産総研の持つ印刷技術を組み合わせて、生産効率の向上を図ると共に、印刷プロセス特有のばらつきも利用して、より固有性の高いセキュリティータグの開発を進めていく。また、この有機セキュリティータグ技術を利用して安全安心な社会を実現するために、データベースや認証サーバーなどを含む信頼性の高い運用システムの開発などを行っていくとしている。(編集担当:慶尾六郎)