8K映像を約6 kWの消費電力で実現する光ネットワーク技術

2014年10月04日 19:02

 国内の通信ネットワークの総トラフィックは年率20~40 %で増大している。また、4K、そして8Kと映像の高精細化が進んでおり、これに伴い今後、インターネット上の動画送信のため、トラフィックの需要の増大は続き、現在の1000倍以上の容量が必要になると予想される。これに対し、現在ではルータでパケットと呼ばれる単位で情報をやり取りするネットワークが使われている。これは、比較的小さな情報の取り扱いに適しているが、情報量の増大に比例して、消費電力が増大するため、今後の高精細映像など大きな情報量のトラフィックの需要に対して、ルータの消費電力増大が大きな制限要因となる。このため、大容量の映像情報を低消費電力で扱うことのできる新しいネットワーク技術の開発が望まれている。

 独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)ネットワークフォトニクス研究センターらは、情報の大きさに対応して階層的に光パスを切り替える技術、光パスと配信サーバーの統合的な資源管理技術を開発、従来の電子ルータを使ったネットワークに比べて1000分の1以下の低消費電力で超高精細映像などの情報を扱える新しい光ネットワーク技術を開発したと発表した。

 今回の開発は、産総研を中心に、日本電信電話株式会社、株式会社富士通研究所など10社が参加している「光ネットワーク超低エネルギー化技術拠点」プロジェクトによる成果である。2014年10月8~9日に茨城県つくば市の産総研つくばセンターで、NHKと連携した8Kスーパーハイビジョンの配信を含む公開実証実験を行う。

 新技術は、デバイスから、システム機器、ネットワーク資源管理までの技術開発により、ユーザーとユーザー、ユーザーとデータセンター間などを光スイッチでつなぐ新しい「ダイナミック光パスネットワーク」技術である。多様な大きさの情報に対応できる階層構造のネットワーク・アーキテクチャを設計、数千万の加入者を収容して、加入者に1 Gbps-100 Gbpsまでのパスを提供、数百ペタビット/秒のトラフィックを消費電力の増大なしに処理できることを示した。

 また、ギガビットレベルから8Kスーパーハイビジョンまでの多粒度の情報のパスをダイナミックに切り替えることのできる、多階層の光スイッチ群と電子スイッチで構成されるノードとその制御装置を開発。光ファイバーの分散により生じる波形の劣化の評価技術と、その劣化を動的に補償する技術、さらに伝送路の有効活用のための多重化技術も開発した。そして、ダイナミックに光のパスを切り替えることのできる情報の粒度に応じたスイッチを開発した。

 高精細映像などの大容量の情報のやり取りにこのネットワーク技術を使うと、今後、トラフィックが数千倍以上に増えたとしても、現在と同程度以下の消費電力に抑えることができる。今回、実証実験で使用するネットワークは8つのノードを用いたものであるが、6 kW程度の電力消費で約90 Tbpsの情報を扱うことができるという。また、種々の大きさの情報に対応できる技術を開発したことで、全国をカバーする数千万加入のネットワークへの拡張が可能になった。

 今後は、これまで開発した技術の幾つかは、プロジェクトに参加している各企業で事業化を進める予定である。また、公開実証実験で性能が確認されたネットワーク機器を活用してテストベッドを構成し、今後3年間で実用化に向けたさらなる研究開発を推進する方針だ。(編集担当:慶尾六郎)