2020年の国内パブリッククラウドサービス市場は15年比2.4倍の6,370億円に

2016年02月29日 08:27

 IT専門調査会社 IDC Japanは、国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表した。これによると2015年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は、前年比32.3%増の2,614億円と推定している。また、同市場における2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は19.5%で推移し、2020年の市場規模は2015年比2.4倍の6,370億円になるとIDCは予測している。

 国内パブリッククラウドサービス市場は普及期を迎え、システム導入(新規/刷新/更新)時に、クラウドを検討するユーザー企業が増加している。特に、大企業ではクラウドの検討は一般化しつつあり、パブリッククラウドサービスは重要な検討項目となっている。また、クラウドと伝統的なITを同等に比較検討する「クラウドオルソー(Cloud Also)」から、クラウドを優先的に検討する「クラウドファースト(Cloud First)」へ、と変化も見られる。

 2015年の国内パブリッククラウドサービス市場では、IT資産の継承を目的とし、既存の業務アプリケーションをIaaS(Infrastructure as a Service)/PaaS(Platform as a Service)環境上で稼働させる「クラウドイネーブルド」の動向が顕著に見られた。また、一般消費者向けWeb/Mobileアプリケーションの開発/稼働環境としてIaaS/PaaSを利用することは一般化しているとしている。

 国内パブリッククラウドSaaS(Software as a Service)市場では、モバイル対応に優れた汎用的なアプリケーション(コラボレーティブやCRM: Customer Relationship Management)は「クラウドファースト」が浸透したと言えるという。また、Human Capital Management(HCM)や「マイナンバー管理ソリューション」といった新しいアプリケーションは、SaaSモデルでのみ提供されることが増加しており、ユーザー企業の意識にかかわらず、ベンダーの「クラウドファースト」が進んでいるという。

 国内パブリッククラウドサービス市場は、成長市場であることは言うまでもない。また、汎用性の高いサービス(IaaSやコラボレーティブアプリケーション)はコモディティ化が進んでおり、ベンダーの寡占化が見られる。一方、ユーザー企業の裾野は広がっており、産業特化型アプリケーションなどはサービスの多様化/細分化が進むとIDCではみているという。「国内パブリッククラウドサービス市場では、汎用性の高いサービスは寡占化が進むため、生き残るベンダーは数社にとどまる。したがって、アプリケーション領域での差別化が多くのベンダーにとって重要な事業戦略となる」と、IDC Japan ITサービス リサーチディレクターの松本聡氏は分析している。(編集担当:慶尾六郎)