IT専門調査会社 IDC Japanは、国内中堅中小企業IT市場の2016年~2019年の市場予測を発表した。これによると、2016年の国内中堅中小企業IT市場においては、国内経済が堅調に推移し、業績の回復によって、システム刷新/新規開発に着手する中堅中小企業が増加することから、市場規模は3兆8,833億円で前年比2.3%とプラス成長を予測している。
2016年以降の国内中堅中小企業IT市場は、堅調なプラス成長を予測しているという。同社では、特に2020年の「東京オリンピック/パラリンピック」開催を控えて、国内では積極的な投資が見込まれることから、中堅中小企業でも業績が好調な企業が増加し、IT支出が拡大するとみている。
産業分野別では、製造業において自動車、機械などの大手企業と取引する部品メーカーで積極的なIT支出が継続しているほか、流通業でも顧客管理など情報系システムへの投資に加えて、今後「消費税増税(軽減税率)対応」のためのIT支出も見込まれるという。加えて、情報サービス業ではインターネットサービス業において積極的なIT支出が継続していることから、これらの産業分野では比較的高い成長率を予測している。
ただし、従業員規模別で見た場合、中堅企業(従業員規模500~999人)など従業員規模が大きい企業においては既存システム刷新に加えて、情報系システムの新規開発など積極的なIT支出が継続する一方で、小規模企業(従業員規模99人以下)では、一部でシステム刷新を再開する企業はあるが、多くの企業で法制度対応など最低限のIT支出にとどまるとみている。
また、地域別で見た場合も、東京、大阪、名古屋を中心とした大都市圏の中堅中小企業では好調な地域経済によってIT支出は拡大しますが、その他の地域の中堅中小企業では、IT支出の抑制傾向が継続し、IT支出の「二極化」が拡大するとみている。
このように2016年以降の国内中堅中小企業IT市場は、全体的にはプラス成長を予測しているが、従業員規模、地域などによってIT支出動向の格差が拡大するとみている。IDC Japan ITスペンディング リサーチマネージャーの市村 仁氏は「国内中堅中小企業IT市場でさらなるビジネスの拡大を図るためには、IT支出に消極的な小規模企業、または大都市圏以外の地域の企業におけるIT支出の活性化が重要である。ITベンダーは、これらの企業の潜在的なIT活用ニーズを掘り起すために、モバイル、クラウドのようなソリューションを積極的に提案するなどのIT支出喚起の施策が求められる」と分析している。(編集担当:慶尾六郎)