シャープがJSTと酸化物半導体に関するライセンス契約締結

2012年05月30日 11:00

 シャープが、科学技術振興機構(JST)と、酸化物半導体(IGZO)を用いた薄膜トランジスタに関する特許のライセンス契約を、本年1月20日に締結していたことを発表。シャープがIGZOを採用した液晶パネルの本格的な生産に移行したことから、JSTとの合意に基づき、今回の発表に至った。

 酸化物半導体(IGZO)とは、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)から構成される酸化物のこと。今回ライセンス契約の対象となる特許は、東京工業大学の細野秀雄教授らが、JSTの創造科学技術推進事業のプロジェクトにおいて発明したもの。東京工業大学などの出願を含め数十の特許群から構成され、JSTが一括でライセンスを実施している。2004年に同教授らは、薄膜トランジスタに用いると、従来の液晶パネルで採用されているアモルファスシリコンに比べて電子移動度が1桁高いことを見出し、同年11月には科学雑誌「Nature(ネイチャー)」で成果発表していた。

 シャープでは、このIGZOを採用した高性能な液晶パネルを半導体エネルギー研究所と共同開発。その生産を、亀山第2工場で3月より開始し、4月から本格的な生産に移行している。高精細化と低消費電力化が図れるため、モバイル機器や高精細ノートPC、高精細液晶モニターなどの幅広いアプリケーション向けに供給し、新しい商品市場の創造を目指すという。

 スマートフォンやタブレット端末の普及で、中小型のパネルは世界的に好調な状況にある。業績悪化に苦しむシャープは、今回のライセンス契約に基づく製品で、この波に乗って業績を回復させることが出来るのか。今後の動向に注目が集まるところであろう。