ヤマハ発がプロの技量を養うアプリを自社開発

2012年05月28日 11:00

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より良い商品、そして何より安心・安全な車を製造する為に実施される走行テスト。二輪車メーカーであるヤマハ発動機もテストライダーを抱え養成しているが、この春から社内開発による先進的教育ツール「操縦技量判定アプリ」が導入されたという。

 より良い商品、そして何より安心・安全な車を製造する為に実施される走行テスト。近年では、日産がリーフの寒冷雪上走行テストや冠水路走行テストの模様を公開したように、ユーストリームやユーチューブといった動画サイトで走行テストの様子が配信されているため、目にしたことのある方も多いのではないだろうか。

 走行テストには二種類あり、上記のような安全性能や乗り味といった、商品の性能を確認するテストのほかに、排気ガスの排出量や燃費、ブレーキ制動など、商品の品質に関するテストもある。こういった多くのテストを行うために、必然的に企業が抱えるテストドライバーやテストライダーの数はとても多くなる。彼らは走行や性能を判定する技能にかけてはプロ中のプロと言える存在であるが、質の高い業務を遂行するために、定期的なトレーニングや技量判定の機会が設けられている。

 当然のことながら、二輪車メーカーであるヤマハ発動機もテストライダーを抱え、養成している。特に品質に関するテストを行うライダーの養成の場に、この春から社内開発による先進的教育ツール「操縦技量判定アプリ」が導入されたという。各種のセンサーを装備した車両から送られる走行データと映像情報を同期させ、旋回性と安定性を軸とした判定結果を即時にタブレット端末に表示する「操縦技量判定アプリ」は、今まで感覚に頼っていた部分について、具体的なデータを示しながら指導することを可能に。また、ライダーの身体に感覚が残っているうちにデータ提示が出来ることもメリットだとのこと。さらに、アプリによる指導を受けたテストライダーも、何が良くて何を改善しなければならないのかを客観的に理解出来ることに、その効用を実感しているという。

 同アプリの研究・開発を行っているヤマハ発動機のイノベーション研究部によると、基礎研究の段階では、操縦者の技量を旋回性と安定性という切り口で定量化するツールに過ぎなかったという。この研究に目をつけたのが、安全かつ質の高い走行評価ライダーの育成に取り組む品質監理部であった。ここで、開発を進めるために多くのデータを必要としていたイノベーション研究部と、この技術を応用して所属ライダーの操縦技術向上に役立てたい品質監理部の思惑が合致。数年間の協力関係によって教育ツールにまで発展し、満を持しての実用化に至った。

 従来は人の感覚に頼らざるを得なかった部分も定量化出来るようになれば、汎用性を持ち、安定した品質の維持・向上へと繋がる。現在、諸外国で日本製品が支持される理由に、先人たちが作ってきた製品の品質の高さが挙げられる。その品質の高さが信頼を生み、基盤となって現在の日本の製造業を支えていると言えるであろう。その信頼を裏切らないモノ創りの為に、そして将来世代にその信頼を繋ぐためにも、こうした開発がさらに進むことを期待したい。