長年、報道されては否定されてきたスターバックスのイタリア進出。それが現実となった。
2017年初頭に、スターバックスはイタリアのペルカッシ・グループと提携し、ミラノにイタリア1号店をオープンすると発表した。イタリアへの進出は、スターバックスCEOであるハワード・シュルツにとって悲願でもあった。彼がスターバックス設立のアイデアを思い付いたのは、33年前のイタリア出張の時だったという。
ところで、アメリカとイタリアのコーヒー文化にはかなりの違いがある。アメリカでは、コーヒーはその店舗でゆっくりと楽しむものだ。コーヒーを注文し、ソファに座り、友人との会話やインターネットを楽しみながら至福のひと時を楽しむ。これがアメリカ流だ。
一方、イタリアのコーヒーの飲み方はもっとせかせかとしている。彼らはエスプレッソバーでコーヒーを飲むのだが、基本はカウンターに立ったまま。隣に立つ見知らぬ他人と、ディスプレイに映し出されたサッカーの試合について数分議論をし、そのままエスプレッソコーヒーを飲み干す。これがイタリア流なのだ。
そのようなコーヒー文化の違いもあり、現地イタリア人からは、このスターバックスのイタリア進出に対して否定的な意見が多い。ある人物はツイッター上で、「文化的侵略」と言い、またある者は「アメリカナイズされたピザと並んで”世界終末の兆し”だ。」とコメントしている。自身のコーヒー文化に誇りをもつイタリア人ならではの意見である。
この反応を見る限りでは、スターバックスのイタリア進出は、いばらの道となる可能性が高いように思われる。
ただ、このような「文化の逆輸入」は、ここ日本でも例がある。日本では昨年、ニューヨーク発祥の「抹茶バー」が、3日限定で日本初上陸をした。抹茶という文化は日本発祥のものであるが、それがアメリカで大人気となり、結果的にアメリカから日本へと進出した形だ。抹茶はバーで楽しむもの。このような新しい文化を引き連れて日本に上陸した彼らの店舗は、日本でも受け入れられ、大注目の的となった。
スターバックスのコンセプトは「Third Place(第三の場所)」。職場でもなく、家庭でもない、第三のくつろぎのスペースとして、スターバックスの店舗を提供したいという考えの表れだ。果たしてスターバックスは、この「第三の場所」という文化をイタリア人に浸透させ、成功を収めることができるのだろうか。