日本銀行のマイナス金利政策により、預金金利の引き下げが相次いで行われるなか、個人や企業が預金することに対してメリットを感じなくなり、現金が引き出されたことなどが影響して、2月のマネーストック(通貨供給量、月中平均残高)の速報値が13年ぶりに高い伸びを記録した。
9日に発表された日本銀行の2月のマネーストックの速報値によれば、世の中に出回る現金の増額は前年同月比6.7%増の90兆3000億円であり、2003年2月以来13年ぶりの高い伸びとなった。2月の現金の増加率は、マイナス金利導入前の1月の同6.4%から0.3ポイント拡大し、増加傾向が強まった。なお、マイナス金利は金融機関が日本銀行に預ける当座預金の一部が適用対象なため、日本銀行は民間銀行の個人預金にマイナス金利がつく可能性はないとしている。そして今回の結果に関しても、マイナス金利の影響と判断するのは時期尚早としているものの、自身の預金にマイナス金利がつくことを警戒した個人などが、預金を引き出し保有する現金を増やした可能性はある。
そしてマネーストックの代表的な指標であり、現金や預金など国内に出回る通貨の合計を示す「M3」は同2.5%増の1237兆7000億円であり、2ヶ月ぶりに伸び率が鈍化し、残高は5ヶ月ぶりに減少した。そして「M3」のうち、預金は同4.5%増の540兆6000億円であり、現金通貨は同6.7%増と前月から0.3ポイント拡大した。「M3」に投資信託や国債を加えた「広義流動性」は同3.9%増の1640兆8000億円であった。「M3」からゆうちょ銀行<7182>などを除いた「M2」は同3.1%増であり、マネーストック統計開始以来の最高の伸び率となった。これは、預金金利が低水準となっているため、現金を持つ機会費用が低下したためとみられている。このように、出回る現金の量が増える一方で、預金も4.5%増と増加している。さらに全国銀行協会がまとめた2月末の預金・貸出金速報でも、大手5銀行の実質預金残高は5.9%増と13年ぶりとなる高い伸びをみせている。(編集担当:滝川幸平)