マイナス金利導入で得する事とは

2016年03月05日 20:37

2016年1月29日に開かれた金融政策決定会合で、日本銀行はマイナス金利政策の導入を5対4の賛成多数で決定した。その背景には「爆買い」でも話題の中国経済への先行き不安や、それがもたらす世界経済への懸念、原油価格の下落、そして国内の景気低迷などがある。

マイナス金利といっても、銀行が日本銀行に預けている当座預金の一部に適用されるだけで、個人や企業が利用する銀行の預金金利がマイナスになることはない。しかし、何がしかの影響が出てくることは避けられないだろう。考えられる最も単純なデメリットとしては、預貯金の金利が引き下げられることになりそうだ。マイナス金利になることはなくても、銀行自体がマイナス金利なのだから、そのしわ寄せは一般預金者にも及ぶだろう。すでに、ゆうちょ銀行やみずほ銀行が預貯金の金利引き下げを発表しているが、それに追随する他の金融機関も増えてくるはずだ。さらに、これまでは無料が当たり前だった口座維持管理手数料の導入など、預金者の負担が増えるのではないかと懸念する声も上がっている。

また、銀行だけでなく、生命保険の利率や保険料にも影響がありそうだ。日本国債などで運用されてきた貯蓄性の高い生命保険や終身保険、学資保険なども今後、利率が下がることが心配されている。それだけならまだしも、保険料の値上げもやむなしという声も上がり始めている。安い商品の場合は販売中止の可能性もあるかもしれない。

一方、マイナス金利によるメリットもある。それは、住宅や自動車のローン金利が下がる可能性だ。試算によると、現在1.6%以上のローンを持っている場合、手数料等を差し引いても、借り換えを検討するメリットは充分にあるといわれている。りそな銀行はいち早く、2月途中から「りそな借り換え住宅ローン」の金利の引き下げを発表した。それに追随するようにソニー銀行も3月の住宅ローン金利の引き下げを発表している。さらに住信SBIネット銀行も早々に借り換えキャンペーンの延長を発表している他、他のメガバンクもこれらの動きに同調する様子を見せはじめた。三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、りそな銀行は、2016年3月から10年固定型での優遇金利を過去最低の年0.8%とし、三井住友信託銀行に至っては年0.5%と、前述4行よりも更に0.3%も低い金利を打ち出している。

実際、住宅ローンの金利は今、限りなく低下しており、長期固定型住宅ローン「フラット35」は、返済期間35年以下が年1.25%にまでさがり、2015年2月の1.37%を下回って過去最低を更新している。これに伴って、住宅展示場ではマイナス金利について興味を持つ多くの来場者で例年より賑わったようだ。また、中堅のアキュラホームなどでも、マイナス金利を上手く利用するために、保険や生活費などを見直すライフシミュレーションや、住宅ローン相談などを勧めるほか、同社が得意とする太陽光発電システムの導入などで、住宅ローンの実質負担分を借入金額より少なくする提案を積極的に行っている。

消費増税の影響や、資材価格や人件費の高騰などで住宅の売れ行きが低迷していた中、マイナス金利は住宅市場にとっては願ってもない追い風になるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)