富士通研が毎秒400Gbps光送受信方式を開発 2019年の実用化を目指す

2016年03月24日 09:08

 5GモバイルネットワークとIoTの進展によって、利用者が、より多くの機器やデータにアクセスしながら、一層リアルタイム性の高いサービスを享受する時代が、数年以内に訪れるといわれている。そのための基盤として、大都市圏内に複数のデータセンターを分散して配置し、互いに連携協調させる分散コンピューティング基盤の開発が進められている。これら複数のデータセンターを結ぶ光ファイバーネットワークには、現在主流である1波長あたり100Gbpsのデータ送受信にとどまらず、200Gbps、さらには400ギガビット(Gbps)と大容量化が求められており、その実現に向けた研究開発が進められている。

 これを受け、富士通研究所と富士通研究開発中心有限公司(FRDC)が、1波長あたり毎秒400Gbps光送受信器に向けたデジタル信号処理の基本方式を開発した。

 これまで、1波長あたり400Gbpsの光通信速度については、用途ごとに最適化・選別された高価な部品を使うことで実現していた。光送受信器の構成部品については、より安価な部品の利用や、別途開発が進められているCMOS技術やシリコンフォトニクス技術を用いることによる低コスト化が期待されるが、用途ごとに最適化・選別された高価な部品と比較すると性能が低くなり、性能にばらつきも発生するため、そのままでは、データセンター間の通信距離として求められる100km程度の伝送距離を実現できなかった。

 今回、光送受信器のコスト削減において、特に大きな性能劣化が想定される送信器のひずみを受信器側で補正する新しい光通信方式を開発した。開発した方式では、送信器側で伝送路における信号ひずみの影響を受けにくい独自の基準信号をデータ信号とあわせて送信し、受信器側で送信器の信号ひずみを効果的に補正する。
 
 従来は、送信器の出力信号を観測しながら信号ひずみを補正することによって、送信器として可能な限り品質の良い信号を送信することが一般的だった。しかし400Gbpsにおいては、求められる処理精度が高くなるため、送信器側で補正することが難しくなり、部品・回路コストが増大する。そこで、独自の基準信号を送信することにより、受信器側で送信器の信号ひずみを補正可能とする新しいデジタル信号処理方式を開発した。

 従来の光受信器では、伝送路のひずみを補正してから信号検出のための位相再生処理を行う必要があったが、送信器のひずみの影響が大きい場合は補正が困難でした。今回、独自の基準信号を用いることで伝送路のひずみを補正せずに位相再生を可能とする技術を開発した。この技術により受信器は、まず位相再生と送信器のひずみ補正を行い、その後、伝送路のひずみ補正を行うことで、大きくひずんだ信号からでも変調されたデータの再生を可能にする。

 この技術を用いることで、都市圏内に配置したデータセンター間の広帯域ネットワーク構築に十分な距離を想定した160kmの光ファイバーで400Gbps信号の伝送実験に成功した。また、課題であった低コスト部品などを利用した場合の特性ばらつきの補償に対しても適用可能だ。これにより、次世代の分散コンピューティング基盤を構成する、1波長あたり400Gbpsの光送受信器の低コスト化が実現できる。今後、富士通研究所では、シリコンフォトニクス技術と組み合わせた検証をすすめ、2019年の実用化を目指す方針だ。(編集担当:慶尾六郎)