15年の国内IoT市場におけるユーザー支出額は前年比15.2%6兆2,232億円の見込み

2016年03月02日 09:17

IT専門調査会社 IDC Japanは、国内IoT(Internet of Things)市場におけるユースケース(用途)別/産業分野別の予測を発表した。IDCでは、IoTとは「IP接続による通信を、人の介在なしにローカルまたはグローバルに行うことができる識別可能なエッジデバイスからなるネットワークのネットワーク」であり、法人/政府/個人といったさまざまなユーザーが利用するユビキタスなネットワーク環境に対して、管理/監視/分析といった多様な付加価値を提供するものと定義しているという。

 これを踏まえた調査では、国内IoT市場におけるユーザー支出額について、2015年の見込み値は6兆2,232億円(前年比15.2%増)としている。そして2014年~2020年まで年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)16.9%で成長し、2020年には13兆7,595億円に達するとIDCではみている。

 産業分野別にみると、製造業、運輸業、公共/公益といった分野が市場の成長をけん引する。こうした分野では従来からさまざまな組込み系の機器/インフラに対して投資を行ってきている。そうした機器/インフラの運用効率の合理化や、機器/インフラを通じたエンドユーザー満足度向上などを実現していく上で、IoTを活用することが不可避の流れになりつつあるとIDCではみている。

 具体的には、製造業における製造オペレーションや製造アセット管理、運輸業における輸送貨物管理やフリート管理などの合理化/効率化を、IoTを通じて実現するユースケースが該当する。組立製造、プロセス製造、運輸/運輸サービス、公共/公益、官公庁の5つの産業分野では、予測期間内におけるCAGRは16%台後半から17%台で推移し、いずれも2020年までに1兆円以上の市場へ成長すると予測している。

 また、個人消費者、クロスインダストリーといった産業分野においても、スマート家電やコネクテッドビルディングといった伸び代が大きいユースケースがけん引することで、予測期間内のCAGRが20%を越える高い成長性が期待されるとしている。

 こうした国内IoT市場に対するユーザー支出額の力強い成長の背景には、2020年の東京オリンピック開催に向けた景況感の上昇の期待に加え、企業の事業部門におけるIT予算の拡大とIoTへの期待の高まり、IoTを利用する上での技術障壁/コスト障壁の低下、さらにはIoTをとりまく法規制や支援策の変化が影響しているという。

 IDC Japan コミュニケーションズ マーケットアナリストの鳥巣悠太氏は「IoTには従来IT部門が担ってきたIT分野と、事業部門が担ってきたOT(Operation Technology)分野の双方において非常に幅広いリソースが必要となることから、それらをカバーすべくベンダー間のパートナーシップを拡大していくことが重要になる」としており、また「法規制/技術標準化を進める上での政府やコンソーシアムに対する主体的な働きかけや、東京オリンピック後を見据えた新たな産業分野への参入、そしてスタートアップ企業との連携なども視野に入れていく必要がある」と述べている。(編集担当:慶尾六郎)