厚労省の通知改正で進む「小児向け電動車いす導入」と、その効果とは

2016年04月23日 20:11

Yamaha

「第15回子どもの福祉用具展キッズフェスタ2016」で、東京女子医科大学病院リハビリテーション部の理学療法士の長谷川三希子氏が「小児への電動車いす適合事例から見えてくること」と題して電導車いすの導入効果を熱く語った

 車いすにモーターを搭載した「電動車いす」は身体の不自由なユーザーにとって便利で,実際に普及している。が、道路交通法のうえでは、形式的に「原動機+車(車輪あり)」なので「原動機付き自動車」に該当するため運転免許証が必要ということになる。

 同法による規定で「電動車いす」は、全長×全幅×全高1200×700×1090mmを超えてはならず、最高速度6km/h以内で、一般歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。また、自動車や原動機付自転車と明確に識別することができ、身体の状態により上記規制に該当しない車いすを用いることがやむを得ない場合、警察署長の“確認”を受ければ適法(歩行者扱い)となり、「自転車(軽車両)」と認められる。

 ところが、これまで「子供向け電動車いすに係る補装具費の支給について」とした厚生労働省の通知で、補助支給対象者は「学齢児以上であって、次のいずれかに該当する障害者等であること。 なお、電動車いすの特殊性を特に考慮し、少なくとも小学校高学年以上を対象とすることが望ましいこと」としていた。つまり、電動車両を“幼児に運転させるべきではない”としてきたわけだ。

 こうした日本の対応とは対照的に、欧米では1歳児から電動車いすを使わせる試みが積極的に行なわれてきた。健常児がハイハイや伝え歩きを始める次期に、障害児にも自立した移動手段を教えるという考え方が主流だからだ。

 こうしたグローバルな動きに昨年、厚労省は前述したこれまでの通知を改め、従来通知の「電動車いすの特殊性を特に考慮し、少なくとも小学校高学年以上を対象とすることが望ましい」の部分を削除した。

 こうしたことを受けて、小学校就学前に電動車いすを使えるように申請する動きが活発化している。4月16日から東京都内で開催された展示会「第15回子どもの福祉用具展キッズフェスタ2016」では、さまざまな子供向けの福祉用具と並んで小児向け電動車いすや電動アシスト車いすが展示された。

 会場ではいくつもの福祉に係るセミナーが開催されたが、ヤマハ発動機は新開発の子供向け電動アシスト車いすや電動車いすを展示。障害児に向けたファーストステップとして、20インチのキッズモデル車いす電動アシストユニットの新製品「JWX-2」を提案展示した。同時に東京女子医科大学病院リハビリテーション部の理学療法士の長谷川三希子氏を招いて「小児への電動車いす適合事例から見えてくること」と題してセミナーを開催した。

 講演で長谷川氏は、子どもにとって自立した移動の必要性を語り、電動車いす導入によって子供たちの“元気”や“健常者との融合”を、これまでの処方事例を紹介しながら、導入効果について述べた。

 電動車いすの導入効果として、自立移動がさまざまな“やる気”につながり、電導車いす導入後1年ほどで、ジョイスティックなどの操作が特に認知や言語理解能力を大きく高めたとの報告もなされた。氏は、「運動機能障害の軽減が、知的社会性の発達・経験に対する阻害因子の発生を予防する」と、電導車いすの導入効果について述べていた。

 セミナーに参加した高知県の理学療法士の女性が「昨年、担当する障害児に電導車いす支給申請を自治体に出したが、却下された」と述べて、東京都と地方の格差についての言及もあったが、長谷川氏の「自治体への“申請におけるポイント”や“理由書”の具体的な書き方」などに障害児の保護者やセラピストなどの参加者は頷いていた。(編集担当:吉田恒)