【今週の展望】障害物が多くて上値が追えない、もどかしさ

2016年05月08日 20:16

0205_006

大型連休明け、東京市場には七人の敵がいる。SQ週、国内の景気指標、決算の「減損損失」、「パナマ文書」、円高への不安、豪ドル安、そして、疑心暗鬼が晴れない投資家心理。

 ゴールデンウィーク真っ最中で営業日は2日だけだった前週は続落し、前週末6日の終値は16106.72円。そのテクニカル・ポジションを確認すると移動平均線は全て上にある。25日線は16554円、75日線は16638円で、この二人は前々週に急接近したのに「ゴールデンクロス」できないまま、再びはなればなれに。もどかしい愛の行方。200日線は18187円で2000円以上も離れた「光年のかなた」にかすむ。

 日足一目均衡表の「雲」は6日時点では16385~16734円で、25日線、75日線、5日線と、3月SQ値の16586円を包み込みながら終値の上にどんよりと浮かぶ。雲の下限まで279円も離れている。

 今週の雲の下限は16385円で一定だが、上限は16727円から16706円、16607円、16586円と日ごとに下がっていく。雲が薄くなるということは、それを突破する時の抵抗力の低下を意味する。週末13日の雲の厚さは201円しかなく、何か好材料をきっかけに雲を一気に突破できる可能性が増してくる。それを逃しても来週の17~18日に「雲のねじれ」が起き、5月25~27日にも再びねじれるので、この先にも突破のチャンスはある。

 ボリンジャーバンドは、6日終値は15955円の25日線-1σと17153円の+1σの間のニュートラル・ゾーンにあるが、位置はその下端に近い。下値が限定されて上値を追いやすい傾向がやや増した程度で、今週の反発力はあまり強くはない。

 6日続落で合計1465円下落しても、オシレーター系指標で「売られすぎ」シグナルが点灯しているのはストキャスティクス(9日・Fast/%D)1個だけ。15.4で売られすぎ基準の30を下回っていた。それ以外は4勝8敗で33.3%のサイコロジカルラインも、-2.8%の25日移動平均乖離率も、84.8の25日騰落レシオも、52.0のRSI(相対力指数)も、-23.1のRCI(順位相関指数)も、43.4のボリュームレシオも、みんな低位だが売られすぎ基準には達していなかった。オシレーター系指標でも今週の反発はあまり期待でもない。

 4月28日時点の需給データは、東証から投資部門別株式売買状況がまだ発表されていない(5月10日発表)。裁定買い残の金額も同様。信用買い残は22日時点から373億円増の2兆4997億円で3週連続マイナス。信用倍率(貸借倍率)は3.72倍で22日の3.35倍から4週ぶりの増加に転じた。前週のカラ売り比率は2日が39.9%、6日が41.3%で、再び「異常な水準」と言われる40%台に乗せている。日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)は2日終値が31.07、6日終値が29.65。4月中旬には25付近まで下がった日もあったが、熊本地震が起きてからはたびたび30を超えている。

 6日に発表された4月のアメリカの雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びは16万人で市場予測の20.5万人も3月の20.8万人も大きく下回った。完全失業率は5.0%で市場予測の4.9%まで下がらず横ばい。平均時給は市場予測通りに上昇加速。雇用指標の悪化を受けて直後は、為替はドル安円高、NYダウは下落、日経平均夜間取引は下落、金先物価格は上昇だったが、6月利上げが先に延びる観測でNYダウ終値は79.92ドル高で、為替のドル円は107円台に戻り、CME先物清算値は16080円と、みんな元のサヤに収まっていた。

 そのため、アメリカ雇用統計の東京市場への影響はそれ自体はニュートラルで、9日は不安材料が一つ、区切りがついた効果によって押し目買い、上昇で始まると思われる。今週の上値は日足一目均衡表の「雲」の下限の16385円を超えて雲の中に入り、とりあえず16554円の25日移動平均線を目指すだろう。そのすぐ上には16586円の3月のSQ値もある。だが、テクニカル的に言えば、反発してもその付近が限界とみる。さらに、それ以外の要素も「逆風」ばかりだ。

 需給面では10日、11日はSQ週の火曜日、水曜日で下げやすい。11日にトヨタ<7203>が発表するなど第2のピークを迎える3月期決算銘柄の業績はおしなべて円高の影響を受け、10日に三井、三菱が発表する大手商社は特に顕著だが、最終利益が「減損損失」にかじられるばかりでかんばしくない。今週発表される経済指標は消費動向調査、景気動向指数、景気ウォッチャー調査があり、国内景気への不安が増幅しそうだ。「パナマ文書」で飛び出すサプライズも怖い。為替レートも、ドル円107円台を週末まで保てるかどうか心もとない。さらにもう一つ、「豪ドル安」も無視できない要素だろう。高金利の資源国通貨で日本ではFXでの人気が高いが、連休中のオーストラリア準備銀行(RBA)の予想外の利下げで急落した。個人投資家がそれで損失をこうむり、投資意欲がそがれるかもしれない。また、日本企業の業績にも悪影響を及ぼしそうだ。

 一方、下値のほうは、心理的節目「16000円」の〃防衛力〃の強さが前週の営業日2日間で証明された。先物も現物も16000円のライン上で買いが入り、底が抜けなかった。SQ週の今週もその効果は続くだろう。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは16000~16600円とみる。数年前まで大型M&Aなどを材料に何度も急騰しては日経平均を押し上げた「寄与度御三家」のソフトバンクG<9984>だが、最近は大きな話題が出てこなくなった。10日、その本決算発表がある。孫正義社長は「平時は寝たふり」「大人のソフトバンク」などと発言しているが、以前のソフトバンクのような派手でやんちゃな「大物スター」がいないと、マーケットのステージは盛り上がらない。(編集担当:寺尾淳)