ゼリー飲料は、各社の主力商品となれるか

2012年05月14日 11:00

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飲料業界は主力と呼ばれる商品がある一方で、各社ユニークな商品もラインナップしている。近年でいえば、ゼリー系飲料がその代表格であり、ダイドードリンコが3月26日から発売している凍結系果実入り飲料「みかんジュレ」もそんな商品の一つとして注目を集めている。

 炭酸飲料やスポーツ飲料、茶系飲料から嗜好性飲料、ミネラルウォーターに至るまで、それぞれにオリジナルのブランドを持つ飲料メーカー各社。その中で、茶系飲料が流行すれば該当するブランドに注力をし、ゼロ系飲料が流行すればカロリーや糖質などを抑えた商品を各ブランドで発売するなど、ブランドを軸とした商品展開をしている。同一ブランド内でも主力と呼ばれる商品がある一方で、各社ユニークな商品もラインナップしている。近年でいえば、ゼリー系飲料がその代表格と言えるのではないだろうか。

 2008年、日本コカ・コーラより「ファンタふるふるシェイカー」が発売されている。ファンタ日本発売開始50周年を記念して発売された本商品は、振らないと飲めない炭酸飲料として一世を風靡。最近でこそあまり見かけなくなったが、一時期はTVCMも盛んに放映された人気商品である。また果実飲料のQooからも「ぷるんぷるんQoo」を発売。この商品は、子どもの体に不足しがちな栄養素が手軽に補給できるものとなっており、単なるゼリー飲料とは言えないものである。さらに、ミニッツメイドからもゼリー飲料を発売。こちらの商品は、形状はゼリー飲料であるが、その役割は朝食。飲料の市場ではなく、食事・食品の市場をターゲットとした商品となっている。

 こういった傾向は他社の商品動向からも見て取れる。今年3月27日からカゴメは、「野菜一日これ一本」シリーズから「野菜一日これ一本 超濃縮ゼリー」を、「野菜生活」ブランドからは「野菜生活100 朝ジュレ」を発売開始。一度の食事で多くを食べられない人や短時間で体をいたわりたい方にお勧めというから、こちらも飲料としての商品展開と言うよりは、商品の市場をターゲットとしていると言えるのではないだろうか。

 一方で、代替食としてアピールするのではなく、あくまでも飲料としてその感触・食感をアピールした商品も登場している。ダイドードリンコが3月26日から発売している凍結系果実入り飲料「みかんジュレ」はそんな商品の一つ。冷蔵庫で冷やすとゼリーになり、冷凍庫で凍らせるとシャーベットとなる。プルプルとした食感と、シャリシャリとした食感の両方を楽しめる商品として春夏の新商品に投入される。今夏も昨年同様の節電対策が必要であると予想される中で、冷えた状態が続きやすいセリー状及びシャーベット状の飲料は重宝されるのではないだろか。

 総合企画センター大阪の調査によると、2010年度のゼリー飲料市場は733億円。これは前年比7.3%減の数字であり、今後爆発的な市場拡大の望みが大きくないことを示していそうである。しかし、嗜好訴求型商品のブームが去った一方で、健康訴求型商品の需要は今後も伸びると予想されている。サマータイム制導入による朝食需要や、節電対策の冷涼手段としてのジュレやシャーベットは、確かに需要が大きいであろう。また健康志向を受けて運動をする中高年層が増えており、嚥下能力の下がったそれらの世代が、栄養摂取目的で飲用する機会も増えているという。各飲料メーカーにとって、主力商品とは言えないであろうゼリー飲料であるが、このまま節電意識や高齢化が進めば、いつの日にか、主力と言える程の市場を形成する日がくるのかもしれない。