リクルートが昨年行った調査では、全国にある744大学のうち、8割超の学長が自校の授業料は「適正」と考えていることが分かった 。授業料については、今後も約4分の3が「据え置き」との意向。04年に国立大学が法人化されるなど、大学にも経営効率化が求められるなか、授業料を値下げする余裕のある大学は少ない。
とはいえ、日本の大学の授業料は高い。経済協力開発機構(OECD)によると、日本の公的な大学型高等教育機関の授業料は、アメリカ、韓国、イギリスに次いで高い(「図表でみる教育2012」) 。大学の約8割を占める私立大学では、文系なら4年間で400万円、理系なら500万円近い学費がかかる 。そしてそれらのほとんどが、家計負担でまかなわれている。日本の国内総生産(GDP)に占める公的教育支出は3.6%(09年)と、比較可能な加盟国の中で最下位だ。
文部科学省によると、子ども2人を私立大学に通わせた場合、勤労世帯の平均可処分所得の半分以上を教育費が占めることになる 。また家計の貯蓄率をみると、多くの家庭は1人目の子どもが大学生になった時点で、その時点の収入では教育費をまかなうことができず貯蓄を切り崩して学費を捻出している。大学進学までに十分に貯蓄できる余裕がある家庭でなければ、進学を選択肢に入れることすら難しくなっている。
高卒の就職難などもあって、大学へ進学する若者は増えている。しかし親世帯の年収が下がる中、下宿生の1ヶ月の生活費は90年以降で最も低い水準(第47回学生生活実態調査) 。仕送り額が「0~5万円未満」という学生は4割近くにものぼり、食費にいたっては1ヶ月に2万2千円と、1976年の水準にまで下がっている。仕送りが減り、食費を切り詰める学生が多いのが実態だ。
冒頭にあげたリクルートの調査では、94.5%の大学が「学費に対する保護者の関心が以前より高まっている」と回答。8割近くの大学は「学費値下げは学生募集に効果がある」と考えている。
しかし大学の授業料は一向に下がらない。国が高等教育への支出を増やすことも大切だが、大学側にも何らかの改善が必要だろう。大学の「経営努力」とは一体、何であろうか。